毎年クリスマス前になると、郵便局は長蛇の列。大きな包みを抱えた人たちで満員です。くまさんもさぞ大変なことでしょう。特に、表紙の絵にもあるように、雪が舞い散るイギリスではなおさら。くまさんが、朝食前に、玄関の牛乳を取りに行く場面がありましたが、以前暮らしたイギリスの朝の風景をなつかしく思い出しました。壁に飾られた「エリザベス女王風」のくまさんの写真も、一般的な英国人家庭の雰囲気がよく出ていますね。牛乳配達の仕事も、同じように大変ですが、くまさんは、単に配達をするだけではなく、1つ1つの小包や手紙にも気を配り、破れがあれば包み直し、それぞれ待っている人の手元に大切に届けます。くまさんあての小包も、ベッドにつるした靴下の中のプレゼントも、中身はわからないまま、お話は終わりますが、子どもたちが自由に想像できるようにと、作者が余韻を持たせてくれたのでしょうね。細かな描写からも、いろいろと話が広がり、くまさんの帽子のひいらぎと赤い実を見つけた娘は、「Jのキティちゃんのバッグについてるのと同じ!」と言って喜びました。(ちょうどクリスマスプレゼントにもらったバッグだったので) また、くまさんが、「サンタさんへ どうぞおのみください」と、手紙を添えて用意しておいた ミルクとクリスマスパイを見ながら、「Jは、キャンディとお水をあげたよね。ルドルフ(赤鼻のトナカイ)には、草も置いといたよね。きょねんは、みかんとお水だったね。」と、自分自身のクリスマスの思い出と重ねていました。そして、「くまさんは、まだベッドに入って眠ってないから、靴下の中も空っぽなんだよ。」と、お話の最後を締めくくっていました。