12才で母が亡くなり、孤児院に預けられた少女は、実業家として成上り、それまでの女性のファッションを革新していった。
18才で孤児院から出て、裁縫で生計を立て、出会った人に喰いついてチャンスをものにしていった。仕事一筋で、負けず嫌いで、自分の意見をはっきり言う彼女は、敵も多かった。経営者としての才能もあり、時代の流れを見極めて、女性が活動できるスタイルを提案し、第一線で活躍し続けたが、「家庭」の温もりには縁がなかった。
お金持ちになって、今まで見下してきた人たちを見返してやる地位も手に入れ、時代を変えていったが、常に孤独。タバコを吸いながら洋服の仕事をしている様子は、ヤンキーのようだが、実際、ドキュメンタリー映画「シャネル シャネル」でみられる本人の言動は、まさにケンカ腰で、誰にでも噛みついていく激しさを感じた。
この作品は、ドキュメント映画を見てから、読んだので、ずいぶん子ども向けに毒気を抜いた様子に描かれている印象をうけた。実際、男尊女卑で圧倒的な階級社会の時代、女性が事業をやっていくには、想像を絶する苦労があったはず。巻末に乗っている彼女の顔写真からは、戦場を行きぬいた戦士の雰囲気が漂う。
私は、シャネルという銘柄は、華やかなお洒落をする服ではなく、女性の「戦闘服」だと思う。身動きの取れない女性の服に異議を唱えて戦い、自由に動けるように変えていった。
生涯働き続け、戦い続けた激しい人生。ブランドから受けるイメージそのものの、他を寄せ付けない気高さがある。
仕事をして生き抜く覚悟を与えてくれる人物だ。