人気コンビがおくる、新作クリスマス絵本
- かわいい
- ギフト
- ためしよみ
かこさとしさん(写真提供:加古総合研究所)
「だるまちゃん」「からすのパンやさん」シリーズなどで国民的人気を誇る絵本作家・かこさとしさん。2018年に亡くなるまでに発表した作品はなんと600冊以上。現在も、多くの子どもたちがかこさんの絵本を見ながら育っています。
そんなかこさとしさんの未発表原稿が発見されたとの報道があったのは2023年12月。報道を受け、多くの方々より、ぜひその原稿を見たい、形にしてほしいとの声があがりました。
作品名は『くらげのパポちゃん』。終戦後しばらくたった日本を舞台に、ちいさなくらげの「パポちゃん」が、とある少年の、戦争で亡くなりいまも行方知れずな父親を探しに住み慣れた場所から大海原へ旅に出ます。旅の終わりにパポちゃんが目にしたこととは……。
かこさんの原稿は文章のみであったため、絵本にするにはどなたかに絵を描いていただかなくてはなりません。そんな中、幼い頃より”じいじ”こと、かこさとしさんの側で育った孫・中島加名さんが、祖父の想いを受け継ぐ形で絵を描くことを決めました。発見からおよそ一年後、絵本はついに完成し、2月上旬に発売となります。
予約開始中の本作、このたびついに表紙を公開します。
かこさんの作品を整理する中で『くらげのパポちゃん』を発見した、加古総合研究所代表・かこさとしさん長女の鈴木万里さんは、本作について下記のように述べられました。
(『くらげのパポちゃん』執筆当時)加古は川崎の臨港地帯に勤務、日曜日には子どもたちに紙芝居を見せたりしていましたが、その中には戦争で父親を失った子もいました。昼休みにクラゲを眺めながらそんな子どもたちの父親のことを考えているうちに、「パポちゃん」のお話ができあがったのではないでしょうか。
加古は晩年「戦争の本を作りたいが、なかなかできない」と繰り返していたのですが、先に発見された『秋』(講談社)同様、このパポちゃんも戦争を伝える貴重なメッセージです。このお話に込められた深い思いを感じとっていただけたら幸いです。
この書籍を作った人
1926年福井県越前市生まれ。東京大学工学部応用化学科卒(1948年)。工学博士。技術士(化学)。1951年から会社勤務の傍ら東大セツルメント活動に携わり、工場地域の子どもたちを対象に子ども会の主催を約20年続けた。のちにその経験から多数の絵本を発表。専門性を活かした『かわ』、『海』、『地球』、『宇宙』などの科学絵本の他、『からすのパンやさん』、「だるまちゃん」シリーズなどの物語絵本などさまざまな分野で600点以上の著作がある。
この書籍を作った人
1994年、神奈川県藤沢市に生まれる。国際基督教大学教養学部卒、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退(文学修士)。北海道西興部村在住。野外イベント「ニシニカリシテ」主催。書籍『愛蔵版ニシニカリシテ』および音楽CD 『爆縮盤ニシニカリシテ』を制作。
出版社からの内容紹介
『からすのパンやさん』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』など、今もなお読み継がれているベストセラー絵本を数多く残した、かこさとしさん。
かこさんの、戦争をテーマにした幻の遺作が見つかった――そうNHKが報じたのが2023年のことです。
見つかった原稿のタイトルは『くらげのパポちゃん』。しかし、見つかったのは原稿のみで、絵はついていませんでした。
かこさんの遺志を継いだのは、かこさんの孫である中島加名さん。奇しくも、かこさんが『くらげのパポちゃん』の原稿を書いたときと同じ年齢でこの作品に出会い、絵を描くことになりました。
『くらげのパポちゃん』に描かれているのは、戦争を二度と起こしてはならないというかこさんの強い思いです。その思いが祖父から孫へ、そして読者である子どもたちへと受け継がれる――それが、この絵本と言えます。
2025年は、終戦から80年にあたります。
太平洋戦争の時代に生きた、また、焼け野原となった戦後の日本で強く生き延びたと証言する人はかなりの高齢となり、鬼籍に入られた方も少なくありません。
一方、世界を見渡せば、この瞬間にも戦争が継続しており、多くの人々が命を落としています。
「戦争経験を語り継ぐ」「平和への想いをつなぐ」ことが重要なテーマとなっている今だからこそ、多くの人に伝えたい絵本です。