にぎやかでおいしそうな食べ物絵本が好評のさいとうしのぶさん。代表作『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』(リーブル)は子どもたちに絶大な人気があります。そんなさいとうさんの作品に「かぞえうたのえほん」シリーズがあるんです。
詩人・高木あきこさんのリズミカルなかぞえうたにあわせ、さいとうさんが絵を描く、愉快でかわいいシリーズ。第1作目『へんてこかぞえうた 1ちゃんいちにち』、第2作目『どっきりかぞえうた ちょっぴりこわいぞ』につづき、3作目となるのが『にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!』(以上、3冊共にリーブル)です。
時代物を描くのは初めて、というさいとうしのぶさんですが、意外にも絵のアイディアには困らなかったとか。その理由は……? 子どもの頃のエピソードもいろいろお聞きしました。 (*取材は光村グラフィック・ギャラリー(MGG)にて2018年10月に行われました)
●へんてこで楽しい!「かぞえうたのえほん」シリーズ
───どの本もそれぞれに楽しい「かぞえうたのえほん」シリーズ。シリーズに絵を描くことになったきっかけは何ですか?
『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』をはじめ、たくさんの絵本作りでお世話になっている編集者さんから、「おもしろい詩があるんだけど、絵を描きませんか?」と声をかけていただいたことがきっかけです。
───それがシリーズ最初の絵本『へんてこかぞえうた 1ちゃんいちにち』ですね。
- へんてこかぞえうた 1ちゃんいちにち
- うた:高木 あきこ
絵:さいとう しのぶ - 出版社:リーブル
「数字の1ちゃんから10ちゃんまでが元気よく活躍するユーモラスな かぞえうたの絵本です。それぞれの数字には性格づけがしてあり、 各ページごとに、楽しい場面が展開します。愉快なことばあそびを お楽しみください。
何がへんてこなのかというと、この詩は1から10までのかぞえうたなんですけど、最初「1ちゃんいちにち」……とはじまる詩から、ページをめくるごとに1行ずつ減っていくんですね。たとえば「1ちゃん」の詩は10行で、その次の「2ちゃん にじみて」……からはじまる詩は9行。「3ちゃん」……は8行と、だんだん減っていく不思議な詩なんです。
(『へんてこかぞえうた 1ちゃんいちにち』より)
5ちゃんになると「5ちゃん・6かいも・7めんそうで・8のじひげまで・9リスマスパーティ・10じになっても」……と6行になります。数字それぞれに性格やキャラクターがあって、高木あきこさんのかぞえうたが楽しいんですよ。
(『へんてこかぞえうた 1ちゃんいちにち』より)
絵を描いた直後は(詩に対して)「うまく描けていないなあ」と悩むこともあるんですけど、こうして見ると……なかなか良いですよね(笑)。5ちゃんがひげをつけてはしゃいでいるクリスマスパーティの絵は、自分でも好きです。
───パーティでトランプやオセロをして、ふざけて笑い転げて……。どの数字もかわいいです!
この絵本で数字が読めるようになりましたとか、数字を覚えましたという感想をいただくことがあって、そのときは嬉しいです。描いてよかったなあと思います。
───続いての2作目が『どっきりかぞえうた ちょっぴりこわいぞ』ですね。
- どっきりかぞえうた ちょっぴりこわいぞ
- うた:高木 あきこ
絵:さいとう しのぶ - 出版社:リーブル
前作『1ちゃんいちにち』に続く、高木あきこ+さいとうしのぶのコンビによる「かぞえうたの絵本」の第2作です。ちょっとだけこわい、魔女やひとだま、やまんば、カッパなどが1から10の数字に合わせて登場します。 リズミカルな言葉とユーモラスな絵の楽しい言葉遊びの一冊です。
これも編集者さんからお話をいただいて絵を描きました。ツノがある子や、三つ目の女の子、ひとだま、化け狸などの妖怪が出てきます。
(『どっきりかぞえうた ちょっぴりこわいぞ』より)
───「ひとつ ひぐれの かくれんぼ ひとり だれだろ しらないこ 一ぽん のぞいた ひかる つの」
「ちょっぴりこわい」と言われるとドキドキしちゃうのですが……。
妖怪は出てくるけど、あまりこわくないですよね(笑)。
───魔女の子が七面鳥をひきつれて、虹をスケートボードですべっていく場面がおもしろかったです(笑)。やまんばのページもインパクトたっぷり!
高木さんの詩がおもしろすぎて、絵のイメージが湧かないことがまったくないんですよ。“やまんばが800歳の誕生日に8枚ステーキを食べる”なら、やまんばの部屋はこんな感じかなあ、と勝手に頭に絵が出てきて。
───こわがったり驚いたりしていた人間の男の子も、最後は妖怪たちと記念写真におさまりますね。
最後の場面、七面鳥が七羽いるはずなので、絵の中に隠れているのを探してみてくださいね。
───七面鳥探し、盛り上がりそう(笑)。
●3冊目のかぞえうたは、忍者!
───3作目の『にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!』はいかがでしたか?
- にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!
- うた:高木 あきこ
絵:さいとう しのぶ - 出版社:リーブル
一文字城の殿さまが十文字城の殿さまに大事な手紙を届けます。運ぶのは、忍者たち。一の忍者のイチゴから、十の忍者のジュウシマツまで、襲いかかる悪者たちをしりめにリレーでいちもくさんに十文字城へ。はたして大事な手紙は無事届いたでしょうか。リズミカルな言葉と愉快な絵のかぞえうたの絵本です。
「巻物をリレーで手渡していくんだけど、いろんな忍者が出てくるのよ」と編集者さんから言われて、おもしろそうだなと思いました。
いだいた詩を読んだら、一の忍者はいちご、二の忍者はにゃんこかあ……と今回も全然苦労なく、ぱーっと自然に絵が頭に浮かびました(笑)。
「ひみつの てがみは リレーで はこぶ 一のにんじゃは いちごでござる」(『にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!』より)
実際に絵を描くにあたっては、追いかけてくる悪モノの忍者がいて、あちこち隠れているのも楽しいかも、とか、巻物をもって走る場面だけじゃなく手渡す場面もあったらいいですね、と編集者さんと話し合いながら、場面を作っていきました。
「二の にんじゃは にゃんこでござる にっこり ふたりで あいことば」(『にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!』より)
───三の忍者は三角定規。三角頭に巻いている頭巾がかわいい! 四の忍者はしおむすび。おむすびは、さいとうしのぶさんが何度も描いてきた食べ物ですよね。
おはなし会で読み聞かせをしたとき、一の忍者はいちご、二の忍者はにゃんこ、じゃあ三の忍者はなんだと思う? 四の忍者は? と当てっこ遊びをしました。
しおむすびは意外だったみたいで、「え~? しおむすび~?」と子どもたちに言われました(笑)。五の忍者のごぼうでは、根っこみたいなひょろひょろの足がおもしろいと笑い声が起きていましたよ。
「五のにんじゃは ごぼうでござる ごまかす じゅつが とくいでござる」(『にんじゃかぞえうた ひみつのてがみじゃ!』より)
忍者たちが運んでいる巻物は「ひみつのてがみ」。一文字城の殿さまが十文字城の殿さまへ、手紙を書いたことからはじまるおはなしになっています。
何の手紙だったのか、絵本を読んでみたらわかりますよ。