酒井駒子によるロングセラー絵本の新装版
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そこで出会ったのは、雄大で美しく、静寂に包まれた世界……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『しずかな夏休み』。作者が見知らぬ土地で味わった静かな感動、その経験を分かち合うために生まれたというこの絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
ある夏のこと。少年が家族とともに車で街を抜け、橋を渡り、向かったのは遠い田舎に住む祖父母の家。窓から見える庭の小道に誘われ、愛犬とともに大木の生い茂った深い森へと歩いていく。道が細くなっていき、ふと顔をあげると、目の前には美しい湖畔が広がっていた!
誰もいない広い湖に潜り、桟橋でひとり横になって日差しを浴び、静かに時間は過ぎていく。賑やかな夕食をすませると、すっかり暗くなった外へ出て、愛犬と一緒に空を見上げる。その漆黒の夜空に輝く星々は……。
雄大な景色に触れ合い、心の中からじわじわと湧き上がってくる静かな感動。それは、彼にとって間違いなく忘れられない景色であり、忘れられない時間となるはず。
その記憶を刻み込むようにじっと佇む少年の姿を見ていると、いつしか読者も同じ経験を味わっているかのような気持ちになるのです。
そんな大切なひと時を、文字のないモノクロームの世界で描き出しているのは、韓国とイギリスでデザインを勉強し、現在イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍されているキム・ジヒョンさん。初めて手掛けた創作絵本なのだそう。異国情緒がありながら、どこか懐かしい湿度を感じる魅力的な風景の数々。小さな水しぶきをあげ、魚たちと戯れ、水面へと戻っていき。好きなだけ太陽の光を浴びた後、満たされた気持ちで歩く帰り道。漆黒の空、全身に降り注ぐように瞬く星々。どの瞬間を切り取っても、それが「かけがえのない時間」なのだということが存分に伝わってきます。
静けさに浸りたくなったら。またあの景色に出会いたくなったら。そっと一人で開いてみてほしい。そんな1冊です。
手に取ってもらえれば
そこにあるのを見過ごしそうになってしまうくらい、静かに佇むこの絵本。漆黒の空を背景とした表紙に、目を凝らさないと見えてこない星々。でも何かが引っかかる。気になるのは、そのタイトルか。はたまた絵本から醸し出される気配なのか。そうして手に取り、ページを開き、やっと出会えるのがこの景色。それはもう、自分の手元に置いておきたくなってしまいますよね。
この書籍を作った人
韓国とイギリスでデザインを勉強し、現在イラストレーター、グラフィックデザイナーとして活動中。絵本、展示デザイン、アニメーション、パプリックアートなど、多様な分野で仕事をしている。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。