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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  食品ロスについて知る入口となる絵本 『ほうれんそうカレー ききいっぱつ!』田中六大さん&入馬さん兄弟インタビュー

まだおいしく食べられるのに、捨てられてしまう食品があることを、みなさんは知っていますか? 「なぜ捨てられてしまうんだろう?」「捨てられたら、どうなっちゃうんだろう?」……そんな素朴な疑問を、おはなしを通して伝えてくれるのが、『ほうれんそうカレー ききいっぱつ!』です。

絵本をつくった田中六大さんは、『だいくのたこ8さん』(作:内田麟太郎、絵:田中六大、くもん出版)や『おとのさまのじてんしゃ』(作:中川ひろたか、絵:田中六大、佼成出版社)、『おすしですし!』(作:林木林、絵:田中六大、あかね書房)など数多くの挿絵を手がけ、自分自身でも絵本作家、漫画家として大活躍しています。監修の入馬さんは、日本フードバンク連盟の理事を務めている弟さん。いったいどんなきっかけでおふたりが絵本を作ることになったのか、伺ってみました。

  • ほうれんそうカレー ききいっぱつ!

    出版社からの内容紹介

    工場で生まれて、スーパーマーケットに運ばれてきたレトルトカレーたち。でも、ほうれんそうカレーのほうちゃんを買ってくれる人は、なかなか現れません。次々に買われていく他のカレーを見送る日々の中、ほうちゃんにある事件が起き……。「食品ロス」が起こる仕組みと、それを減らすために私たちができることについて学べる絵本です。

この人にインタビューしました

田中 六大

田中 六大 (たなかろくだい)

1980年、東京都生まれ。多摩美術大学大学院修了。漫画家・イラストレーター。 挿画に『ひらけ!なんきんまめ』(小峰書店)、『日曜日』シリーズ(講談社)など。絵を担当した絵本に『だいくのたこ8さん』(くもん出版)、『まよいみちこさん』(小峰書房)、『ふしぎなかばんやさん』(鈴木出版)、『おすしですし!』(あかね書房)など。作絵の絵本に『おしっこもらスター』(あかね書房)、『ふしぎなえき』(交通新聞社)など。漫画に『クッキー缶の街めぐり』(青林工藝舎)などがある。

この人にインタビューしました

田中 入馬

田中 入馬 (たなかいるま)

サセックス大学大学院修了。社会開発を専門とし、国際NGOなどでの勤務を経て、現在は日本国内における協同組合運動やフードバンク活動の普及を行っている。公益財団法人日本フードバンク連盟理事。

社会的なテーマの絵本を作りたくて、専門家の弟に相談

───いろんな作家さんの絵本の挿絵をたくさん手掛けてきた(絵本ナビの登録は95冊!)六大さんですが、今回『ほうれんそうカレー ききいっぱつ!』でタッグを組んでいるのは、実の弟である入馬さんです。兄弟2人で、食品ロスをテーマにした絵本を作るきっかけはなんでしたか?

六大:2018年に発売された、学校・公共図書館向けの日本語文法の絵本「えほん こどもにほんご学」シリーズ(文:安部朋世、宮川健郎、絵:田中六大、岩崎書店)を専門家の先生と一緒に作って、とても楽しかったんです。そこで、社会的なテーマを絵本で描きたいなと考えたときに、そうだ、僕の身近に専門家がいるじゃないかと、弟に声をかけました。
弟は昔からけっこう社会的な問題に関心があって、過去にはホームレス支援の仕事を、今は日本フードバンク連盟の理事をやっているので、「食品ロス」についてなにかできそうだなと思ったんです。

入馬:兄から連絡をもらって、僕もぜひやってみたい、自分になにかできることがあったら手伝いたいと思いました。お互いに大人になって家庭を持ってからは会う機会も減っていたので、なにか一緒にやれるのがすごくうれしくて。

絵本ナビに来訪してくれた六大さん(左)と入馬さん(右)。入馬さんは六大さんを「兄ちゃん」、六大さんは入馬さんを「ぷーちん」と小さい頃からのあだ名で呼びます。おふたりの和やかな表情に、兄弟仲の良さが現れています

───テーマを思いついたのはいつ頃ですか?

六大:弟に話をしたのは2年前くらいかな? 編集の藤本さんにも、2019年の12月にはお話ししました。

───藤本さんは「食品ロス」をテーマにした絵本と聞いて、どう思いましたか?

藤本:私自身も、冷蔵庫の整理をしたり食べ残したお皿を下げる時に罪悪感を感じていたので、すごくいいと思いました。六大さんとは児童書「おとのさま」シリーズ(作:中川ひろたか、絵:田中六大、佼成出版社)で仕事をさせていただいていて、「いつか絵本を作りたいですね」と言いながら、なかなか実現していなかったんです。実際に社会活動をなさっている弟さんの話も伺って、改めていいテーマだなと感じたので、すぐに制作をお願いしました。

「おとのさま」シリーズ

───おはなしはどんな風に作っていったのでしょうか?

六大:弟から「食品ロス」の話を聞いて、そこから僕がだいたいのストーリーを作り、書いたものを見てもらってという感じでおはなしを作っていきましたね。まずは主人公をなににしようかなと考えて、子どもたちがよく知っているカレーがいいかなと思ったんです。

入馬:カレーは、フードバンクでは喜ばれる食品なんですよ。それを企業さんが理解してくれて、実際にレトルトカレーを寄贈してくださいます。「子どもに喜ばれる」、「積極的に寄付に協力してくれる企業がある」という2つの良い点があることで、絵本を読んだ方のイメージがつきやすくていいなと思いました。絵本でも描かれていますが、パッケージの印刷ミスや箱がつぶれてしまっただけで、売り場から除外される状況は実際に起きているので、例としてもわかりやすいかなと。

おはなしの主人公のカレーたち。インドカレー的なラインナップになったのは、兄弟や家族でインドに行った影響なのかも

───カレーが主人公になった理由も、食品ロスの現状をよく知る入馬さんの意見がちゃんと活かされているんですね。

入馬:「食品ロス」はセンシティブな問題がいろいろ入っています。用語の意味や絵の描き方に間違いがあると誤解を招くし、批判を受けてしまうこともあって。そうならないように兄に意見を伝えましたし、万が一そうなったとしても、僕自身がきちんと説明できるような表現になるように、かなり気をつけました。

六大:タイトルも、最初は『レトルトカレー ききいっぱつ!』だったんですが、そこもすごく迷ったんですよ。「レトルトカレー=食品ロス」というイメージづけになってしまうのではないか、そもそも「レトルト」という言葉に対してのイメージはどうかとかね。

入馬:「レトルト」は「簡易的なもの」という、マイナスイメージを抱いている人もいると思うんです。だからこそ、「レトルト」とわざわざつけることに意味があるのかなと考えました。例えば「今日のご飯はカレーだよ」と「今日のご飯はレトルトカレーだよ」では、受取手によってニュアンスが変わると思うんです。

パックの中に入っている「カレー」は普通に食品としての「カレー」なのに、それに対して「レトルト」をつけることで、食品としての格が下がってしまうような印象があって、読者にそのイメージを植えつけてしまうのではとリスクについて考えてしまい、兄に相談しました。

レトルトカレーの方がキャッチーでわかりやすいと思いますが、中身はただの「ほうれんそうカレー」。消費者が手にする段階で加工されているだけで、食品としては手作りと同じ価値があるということを、きちんと表明したかったんです。

───わかりやすさを優先するのではなく、きちんと誤解のない言葉で表現することを大事にしたんですね。

食品が作られてから食べられるまでを追いながら「食品ロス」の仕組みについて伝える

───おはなしは、新発売されたほうれんそうカレーのほうちゃん、バターチキンカレーのバタチキちゃんとチーズカレーのチーズくんが、工場を出発するシーンから始まります。ダンボールに入れられて工場を出発したみんなは、仲良くスーパーマーケットの棚に並べられて……と、食品が誰かの手によって作られ、どこで私たち消費者の目にふれるか、その流れがとてもわかりやすいですね。

「おいしくたべてもらうんだ」と期待に胸を膨らませて、工場を出発するカレーたち
スーパーマーケットの棚にきれいに並べてもらったカレーたちのうれしそうなこと! 早く食べて欲しいと期待している様子が、表情から伝わってきます
ところが、なかなか買ってもらえないほうちゃん。このままだと「賞味期限が切れちゃう」と焦ります。その後、紆余曲折を経て、ほうちゃんは最終的に「フードバンク」に辿り着きます

六大:工場からスタートして、ゴールは「フードバンク」という流れは、最初から決めていました。ほうちゃんがどうなるのか楽しみつつ、なんとなく「食品ロス」の仕組みを伝えられたらいいなと思って。子どもは、「食品ロス」についてあまり興味がないと思ったので、それでも読んでもらえるようにおはなしを作りました。

───「賞味期限」のことや「値引きシール」もさりげなく描かれています。

六大:そこは、スーパーで「食品ロス」が生まれる仕組みと、「食品ロス」を出さないためにどんな取り組みをしているか、弟に教えてもらったことを描いたんです。

入馬:値引きシールも売れ残りを減らすという意味では、食品ロス対策のひとつと言えます。今はスーパーだけでなくコンビニでも値引きが始まっているので、意外と周囲を見回すと「食品ロス」を減らすための取り組みがあるんだよと、子どもたちに気づいてもらいたくて。「どうしたら、ほうちゃんを助けられるんだろう」という話から、子どもたちがいろんなアイデアを膨らませて考えてくれたらうれしいですね。

「値引きシール」のおかげで、チーズくんはお客さんに買ってもらえました!
その夜、陳列棚でしょんぼりするほうちゃんを、うめおかゆじいさんが「店で売られているだけ、まだいい」と慰めます。ところが、このあとほうちゃんにトラブルが!(原画より)
棚から落っこちてしまったほうちゃんは、角をぶつけて箱が潰れてしまったのです

───このシーンがすごいのは、箱が潰れた原因を誰かのせいにしていないところですね。ほうちゃんが、自分でおっこちてしまったという。

六大:それは弟が思いつきました。

入馬:商品としての完璧さを求める中では、誰のミスというわけではなくてもこういうことが起きますし、箱が潰れるとみんなはどう感じるかを、わかりやすく表現したかったんです。箱が潰れているとお客さんに買ってもらえないし、そうなると賞味期限が短くなるので、お店では棚から下ろしてしまいます。実際に箱潰れや印刷ミスでフードバンクにやってくる食品はすごく多いので、なぜ「食品ロス」が出るのか、一番わかりやすい例なんですね。食品には一切問題がないのに、パッケージ破損で廃棄されるという現実を知ってもらえたら。

ほうちゃんの場合は、単体の商品の外箱が潰れただけですが、中には商品が詰まった段ボール箱が潰れただけで、フードバンクに送られてくる食品もあります。

───えっ、それはほうちゃんのように商品自体の外箱が潰れていなくてもですか? 

入馬:そうです。例えば、ダンボール1箱にカレーが100個入っていたとして、そのうちの1個が潰れているほどの衝撃を受けていたら、「ひょっとして外側からはわからないけれど、他にもダメージを受けているものがるかもしれない」と考えます。店側は、破損品をお客さんに売って、後から問題になるリスクを減らすために、1箱丸ごと捨ててしまうのだと思います。

でも実際にフードバンクに送られてくる食品を見ても、「どこに問題があったんだろう?」とつぶさに探さないと見つけられないようなものもたくさんあります。

六大:こういう話を聞いていると、そこはやっぱりおはなしで伝えたいなと思いますよね。僕自身は値引きが大好きだし、床に落ちちゃったものでも食べるから(笑)。

───不注意で落としてしまった商品を棚に戻して、新しくてきれいな物を買っていく姿は、普段でもちょくちょく目にします。でも「食品としては一切問題がない」という入馬さんのおはなしと、ほうちゃんのしょげかえった姿を見ると、なにげない自分たちの行動についてもハッとさせられました。

ひょっとしたら自分もやっているかも……と、ちょっぴりドキっとするシーン

入馬:この絵本を題材にして、まさにそういう話を家族やみんなと話してもらえると、すごくうれしいです。親が知識を話すだけでは、どうしても説教臭くなってしまうので。そこが絵本の力だと思いますね。

───そこに、六大さんのおはなしづくりの巧みさを感じます! 最後まで売れ残ってしまうほうちゃんですが、「おいしく食べてもらえたら、それでいいんだ」という信念があって、どんな状況でも諦めずに希望を持ち続けているので、「ほうちゃんを助けるにはどうすればいいんだろう」と自然に考えることができます。

やっと自分をおいしく食べてくれる子どもたちに出会い、うれしそうなほうちゃん(原画より)

六大:テーマは「食品ロス」ですが、そんなに深く掘り下げないで、「へー、こんな問題があるんだなー」と絵本を読む中で知ってもらえたらいいなあという気持ちで作りました。食品ロスの問題は子どものせいではないし、子どもがなにかを気をつけて、大きく改善するような話でもなくて。
だから「子どもが好き嫌いをしなければ、食品ロスは防げる」というメッセージを含ませたくないなと思いました。ぼくだって嫌いなものがあるし。白子とかナンプラーとか。

───それはマニアックな食べ物ですが(笑)。でも入馬さんのお話を聞くと個人の問題ではなく、みんなの意識を変えていく「社会全体」の問題という実感が持てました。これがSDGsが提唱する目標なんですね。

藤本:関連する知識を詰めこんで、問題解決の方法を「こうすればいい」とストレートに出す真面目な方向でも本が作れると思いますが、それでは興味がある子にしか読んでもらえません。ですから、六大さんが提示してくれた「問題があるということを知るための入口」になるように、いろんな人が手軽に楽しめる絵本を意識して作りました。

入馬:絵本を読んで、もっと「食品ロス」について知りたいと思った方にむけて、巻末に解説ページをつけてもらったんです。大人がこの解説を読んだ上で、子どもにわかりやすく話すネタになったらなと思って。この絵本は、読んだ人が「食品ロス」に関連するテーマをピックアップできる「キーワード」をいくつか散りばめられたらいいなと思ったものです。絵本を最後まで読んで、子どもの関心がまだ残っていてくれたら、さらにその先に行くための手掛かりを残しておきたくて、僕が原稿を書きました。

巻末の解説ページでは、絵本の中に出て来たキーワードがわかりやすく説明されています

───フードバンクの仕組みや、「食べきり運動」、「ドギーバッグ」など他の取り組みについてもわかりやすく紹介されていて、読みやすいです。

入馬:うちの子どもは、これで「食品ロス」という言葉を覚えたんですよ。そんな風にぱっと絵本を開いて、「そういえばこんなのがあってね」と会話ができる、キーワードが詰まっています。

人生初の兄弟共同作業が「楽しかった!」

───ほうちゃんの感情豊かな表情はもちろん、スーパーマーケットの棚の様子も、ページをめくるごとに風景が変わっていて、おもしろかったです。

六大:僕はスーパーで働いていたことがあったので、その経験をちょっぴり活かして。場所自体が変わらないので、いろんなアングルで見せ方を工夫しました。

───描いていて一番楽しかった場面はどこですか?

六大さんが持ってきてくれた下絵は、束になるほどたくさん!
しかしこの量は、他の絵本に比べると少ないそう

六大:「たべものすてられじごく」の絵は楽しく描きました。単純にほうちゃんとチーズくんが話しているシーンや処理場に捨てられるリアルなシーンなど、色んなパターンを考えたのですが、絵のリズムでいうと、こういうファンタジーっぽいシーンがあったほうがおもしろいと思って。絵としても、こっちの方がおもしろい。

「たべものすてられじごく」のラフ案
こちらが原画。六大さんらしい大胆な色と筆づかい、ユーモアがたっぷり!

───ほうちゃんたちの「捨てられる」ことに対する恐怖が伝わってきます。表紙も下描きとは違うんですね。

六大:最初は「食品ロスをなくすヒーロー」みたいなイメージで描いたんですが、ちょっと違うなと。そこでヒーローっぽい感じは残しつつも、うめおかゆじいさんと招きねこを入れてコマ割り風にしました。

実際の表紙(左)と下描きの絵(右)

───入馬さんから、六大さんに「こうして欲しい」とお願いしたことはありますか?

入馬:文字だけのおはなしの時から、家族に見てもらっています。ほうちゃんが棚から落ちる理由も、子どもや妻が「運動会がいい!」なんてアイデアを出して。突拍子もなくて適当なアイデアだから、兄も困るだろうと思いつつ、伝えています。ですからその一部が採用されたのですごく喜んで、発売を楽しみにしているんですよ。

あと僕個人からは、啓発のために「フードドライブ」とか「フードパントリー」というキーワードを入れて欲しいと、兄に強くお願いしました。

フードパントリーは、生活に困っている人々に食料を無料で配布するための地域の拠点。写真は、現在国立市にある、六大さんと入馬さんのお母様の工房(銀風工房)です。(写真提供:田中入馬さん)「母はここで絵画教室をやりながら、月に2回地域の生活に困っている人たちにフードバンクからもらった食品を配布しています」(入馬)

六大:そう。ラフの時から10回くらい言われていて、でも最後までちょっとめんどうくさいなって入れなかったんですけれど(笑)。でも印刷所に入稿した後に、やはりと思い直して書き足したのがこれですね。

「フードドライブ」という言葉がどこにあるのか、探してみてください! 答えは記事の最後に見てね

入馬:これでケンカはしたくなかったので、「スルーしているな」と思いつつも要望だけは伝え続けていたんです。最後に入れてもらえて、良かったです(笑)。でも絶対に「フードドライブ」に引っかかる人がいると、僕は信じています。

───そんな経緯があったんですね。六大さんは、奥様も絵本作家でいらっしゃいますが、なにかアドバイスがありましたか?

六大:はい。家族だから遠慮なく、正直な意見を伝えてくれるので、すごく助かっています。

───それでは田中兄弟だけでなく、それぞれの家族も一緒に作った絵本なんですね。小さい頃も、そんな風に兄弟で協力してなにか作って遊んだのでしょうか?

六大:それがないんです。歳は4つ離れていますし、ぼくは小さい頃から常にメモ帳と鉛筆を持ち歩いて、絵だけをずっと描いているみたいな子だったので。

入馬:僕は逆に、絵はまったく描かないんです。うちは、母がアーティストで、父が研究者。ですので、僕たちがこうなったのは必然的なところもある気がします。幼少期は市営団地で育ったのですが、母はその団地の集会室で昔から子どもの絵画教室をやっていて、私も兄もそこに通っていました。

兄とはけんかもしたことないですし、僕も中学を卒業したら海外に行ったので、一緒になにかをすることはなかったです。だから今回は、いい機会だったかもしれないですね。

絵本作家デビュー11年を迎えることができた「奇跡」

───六大さんは過去4回も、絵本ナビのインタビューに登場して頂いています。挿絵家から13年、絵本作家デビューから11年経った今の心境はいかがですか?

六大:もう「奇跡」としか言いようがないです。ずっと綱渡りで、よくやってこれたなと思います。結婚して子どもが2人生まれて、もう小学生になって。

───お子さんは、お父さんの仕事について知っていますか?

六大:完全に理解していると思います。小学校の読み聞かせのボランティアにも行っているので。

───わあ、すてきです! その時は自分の作品を読むんですか?

六大:そうです。最初は宣伝ぽくてやめようかなと思ったんですが、やっぱり自分で読んだ方がウケるかなって(笑)。子どもだけでなく、先生たちもうれしいみたいなので、一応自分のものを読んでいます。絵本よりも紙芝居がすごくウケたり、読み聞かせの前にちょっとクイズをすると盛り上がったり、黒板に絵を描くと喜んだりと、「子どもってこんなところで笑ってくれるんだ」なんて発見があります。

カメラの前でひょうきんなポーズを取ってくれた六大さん。きっとお子さんの小学校でも人気者に違いありません

───そんな六大さんのお仕事に触れてみて、入馬さんはいかがでしたか?

入馬:ずっと「絵本が1冊出たら思い残すことはない」という話をしていたので、奇跡ですね。絵本そのものもアピールしたい気持ちはありますが、それよりも「大人になった兄弟で、1冊の絵本を作った」というメッセージの方が僕にとってはすごく重要でした。もう40過ぎの大人になった兄ちゃんと、30後半の僕が、まったく違う分野で仕事をしていても一緒にできることがある。兄弟、大人になっても仲良くできるというメッセージを発信したいですね。

───確かに貴重な機会です。

入馬:小さい頃はお互いに関心が薄くて。でも共感できなかったとしても、互いのやっていることを批判したことはありませんでした。それがうまく歳を取って、こういう形になったのがうれしかったです。

六大:へへ……。

全力でお兄さんを真似てポーズしてくれた入馬さん。「ふたりでインド旅行に行ったことがあるのですが、兄ちゃんの周りにはいつの間にか人が集まっているんですよ。人間的な魅力があるんだと思います」

───六大さんから、絵本ナビ読者にメッセージをお願いします。

六大:この本を読んでなにか心に残って、もうちょっと詳しい本を読んでくれたり誰かと話し合ってくれたら、未来につながっていくというか、僕がこの絵本を描いた意味があるかなあと思います。でもそれは、読者に求めすぎだと思うので、なんとなくちょっと子どもの心の隅に残ってくれたらいいかな……と思います。僕自身も描いて終わりではなく、これからも「食品ロス」について調べたり考えたりし続けていこうと思います。

───ありがとうございました。

取材・文:中村美奈子(絵本ナビライター)
撮影:所 靖子(絵本ナビ)

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