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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2009.12.08

いりやまさとしさん
「ぴよちゃんえほん」シリーズ

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表現方法について

─── 何といっても真っ先に目に飛び込んでくるのはぴよちゃんのそのホワホワ感! 他の作品も含めていりやまさんの作品のチャームポイントだと思うのですが、この感触が好きなど、こだわりがあるのでしょうか?

「ぴよちゃんは主にパステルという画材で描いているんですが、その画材がたまたま自分にすごく合っていた、というのが大きいですね。質感が動物の毛足の表現などにとても合っていて。ですからそのホワホワ感の表現というのはパステルと出会ってからです。勿論、以前は他の素材でも描いてみた事はあるんですけど、ちょっとまどろっこしくて。表現方法と素材がぴったりきた、という事だと思います。指で伸ばして描いたりする事が多いので、自分の手で描いている、という感覚が好きなんでしょうね。印刷で色が出にくい事もあり、編集者や印刷所にはいつも迷惑をかけてるんですけどね。」

─── 実際にぴよちゃんを描いている時のお写真を見せて下さいました! これは貴重ですね。
※ちなみにこれは、1月下旬発売の『多湖輝のNEW頭脳開発2歳 はじめてのくれよん』というワークの表紙イラストです。

ぴよちゃんを描いている時のお写真 ぴよちゃんを描いている時のお写真
@鉛筆で下描きをしるす。             A厚口トレシングペーパーをその上にのせ

ぴよちゃんを描いている時のお写真 ぴよちゃんを描いている時のお写真
B下描きのアウトラインをうつします。      Cステンシル(型)が出来ます。

ぴよちゃんを描いている時のお写真 ぴよちゃんを描いている時のお写真
D本描きの紙を下描きの上にのせ、      Eパステルを粉にしてパフをこすりつけます。

「僕が使っているのはハードパステルと言います。チョークみたいな感じですね。粉状につぶして使います。いらないスケッチブックをパレット代わりにして色をのせます。色を混ぜたりすることもできます。」

ぴよちゃんを描いている時のお写真 ぴよちゃんを描いている時のお写真
Fステンシルをのせ、パステルをぬりこみます。 G色鉛筆で形をととのえます。

ぴよちゃんを描いている時のお写真
完成です!!

「指でぬる事もありますけど、お化粧で使うパフで色を塗るのが一番早いんです。ただ、買いにいくのが恥ずかしいんですよね(笑)。ちゃんと専門店で売っている高いものがいいんですよ。お化粧の筆とかも色々な太さがあるからいいなぁ・・・と思っているんですけどね。」

このように、直接塗りこんでいくから色はちゃんと定着するそうです。

「最後に色鉛筆でケバケバ感を出したり、目のハイライトに絵の具を使ったり。絵の具は本当にちょっとだけ、ポイントに使います。」

よく見ると、色鉛筆での書き込みも、きわの部分だけであまり描いていないのです。あまり描いてしまうと、とげとげしくなったり、印刷すると更にうるさく線が目立ってしまうそうで、その頃合いが結構難しいそうです。

いりやまさとしさん 聞いちゃっていいのかしら、ちょっとしたコツも教えてくださいました。

「ステンシルをのせる時、わざとちょっと隙間があくようにテーピングをしているんです。そうすることでいい感じにアウトラインがホワホワっとなるんです。」

そしてそして、FとGの間には実はもうちょっと秘密の写真があるそうで・・・。

「この間の作業の途中で、実は絵に気を入れる作業があるんです。指先で・・・。」

ここから先はさすがに企業秘密だそうです! 制作期間としては、作画だけだったら1ヶ月位、でもお話を含めると1年くらいかかることもあるそうですよ。

─── もう一つの大きな魅力なのは、小さな子ども達も一緒に楽しめるしかけ。しかけもいりやまさん御自身が考えられるのでしょうか?

「そうですね。学研さんの保育誌でしかけのコーナーを担当していたりしたので、こういったシンプルなしかけのノウハウは最初から割と持っていたんです。ですからお話としかけは同時につくっている場合が多いですね。子どもに反応を見せながら・・・という事もありますね。」

長く楽しめる絵本、『ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ』

そんなぴよちゃん絵本の中でも、「おやこであそぶしかえほん」シリーズから始まり、赤ちゃん向けの「ぴよちゃんとあそぼ!」シリーズ、さらには「おはなしえほん」シリーズまで、「ぴよちゃんえほん」の中でも様々なジャンルへと広がっています。中でもいりやまさん御自身がとてもお気に入りの一冊だとご紹介してくださったのが『ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ』。

ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ

ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ
作・絵:いりやまさとし
出版社:学研

ぴよちゃんのもとに届いた1通の手紙。その手紙の主は…ぴよちゃんの物語を楽しみながら、登場するさまざまな動植物など、物の名前を覚えられる図鑑絵本。英単語つき。ワイドに広がるパノラマしかけで、迫力のある色彩の美しい絵とその絵変わりを楽しめます。

「僕は、リチャード・スキャリーという人の絵本が好きで。自分なりのスキャリーの絵本が作りたかったというのがあるんです。」

※リチャード・スキャリー:出版した絵本は200冊以上、「スキャリーおじさん」と呼ばれ、ABCの本や言葉絵本など、その多くが海外の子ども達に長く親しまれています。いりやまさんも絵本の仕事を始められる前から集められてたそうです。

「日本でそういう絵本ってあまりないんじゃないかな、自分なりのスキャリーの絵本ができたらいいなと思っていたら、作らせてもらえることになったんです。」

なるほど! 納得です。そういえば、こういう形の図鑑絵本って、ありそうでなかったかもしれません。ぴよちゃんと絵本の世界を一緒に進んでいきながら、出会っていく植物や動物や物の名前を覚えていけるなんて、理想的。子ども達は絶対夢中になるはずだし、親としても嬉しいですよね。

ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ
▲まさに散歩の途中で』出会いそうな草花がいっぱい!子ども達に聞かれた時に答えてあげたいですよね。この絵本でならすぐに覚えられそうです。全てに英単語とその読み方まで記載されています。

ぴよちゃん絵本の巻頭巻末
▲それまでも、ぴよちゃん絵本の巻頭巻末にこんな図解を入れていたそうで、ストーリーに出てくる植物や動物を「これなに? これなに?」と聞くなになに世代の子ども達に答える為のアンチョコとして、親御さん達から「助かる!」ととても好評だったそうなんです。

ぴよちゃんとひまわりの見返しです ぴよちゃんとひまわりの見返しです
▲『ぴよちゃんとひまわり』の見返しです。更にアップにすると・・・↓

ぴよちゃん絵本の巻頭巻末
▲確かに子ども達って、一口にカエルと言っても「アマガエル? 何ガエル?」なんて意外と細かい具体的な名前を知りたがるんですよね。それでお話の中に出てくる絵図鑑を作ろうという流れもあったそうです。

─── 図鑑の絵を描くというのはどうでしたか?

「図鑑の絵は、描いてみたいなとずっと思っていたんです。でも実際描き始めてみると、丁寧に観察して描けば描くほど自分の絵の世界とのギャップというのが出てきてしまうので、そのへんの兼ね合いというのがね。本当にリアルな絵にしちゃうとぴよちゃんの世界じゃないし、だからと言って図鑑だからいい加減な描き方をしたくないし。デフォルメ具合が難しかったですね。物とかは自分の世界観で描けるんですが、植物、動物、虫などは描き始めてから大変だという事に気が付きました(笑)。だから実際より要素を少し減らしたり・・・というのはしています。」

─── 特に畑の場面というのは、しかけをめくる事で地面の上と下というのが見えて・・・すごく面白いですよね。

「野菜ってこういう風に育つんだ・・・っていう事って意外と知らなかったりしますよね。地面の上と下ってこんな風になっているんだよ、なすやきゅうりってこんな風になるんだよ、という事が一目でわかるページになっていると思います。」

ぴよちゃんとひまわりの見返しです
↓ページを開くと・・・
ぴよちゃんとひまわりの見返しです
スイカやかぼちゃが丸ごと転がっていたり、それぞれの葉っぱの形がわかったり。科学絵本としての要素もぎゅっと詰まっているページですね。見応えがあります。

─── 更に牧場や森の中、池の様子まで登場します。それぞれ本当に細かくしっかり描かれているのですが、やはり取材はされたのでしょうか?

「それはもう図鑑はいっぱいお借りしましたね。(学研さんですからね!! )
牧場は・・・行きました。と言っても、この本の為だけでなく、もともと牧場好きだったので(笑)、旅行に出かければついでに一緒に牧場を見に行ったりしていたんです。その時に見てきたものが生かされていますね!」

─── 最近、鳥にはまっている私の息子も喜びそうだと思ったのですが、例えば「きつつき」だとか、可愛らしいけどちゃんと種類がわかるように描かれているにが面白くて。やはり動物は好きですか?

「動物は子どもの頃から好きでしたね。動物園にもよく行っていたし、動物図鑑を揃えて一人で読んでいたり。実際に飼った事があるのは犬くらいだったんですけどね。動物番組だったり、ディズニーの動物のお話なんかも好きでよく見ていました。」

そんないりやまさんが絵本の中で動物を描かれる時には、ちょっとしたこだわりがあるようです。

いりやまさとしさん 「絵本の動物を描くときには、実際に見てからでないと不安がありますね。だから、それをきっかけにして今でもよく動物園に行きます。その動物を見ていると、動きでお話が膨らむ場合もあるんです。なんでのろのろしているのかなあとか。見た目だけでなく、特徴も含めてね。本当は野生動物を見られるといいんだけど、なかなかね(笑)。

動物も個体差をきちんと描き分けるのが好きなんです。犬の種類もちゃんとわかるように描きたいと思っています。デフォルメして曖昧に描くのは、自分としてはちょっといやなんですよね。それを絵本の世界観に合わせて描くというのが好きなんです。怖い動物をいかに可愛くしていくかというのが楽しいんですよね(笑)。だから、結構描写はリアルなんですよ。

他の作品でアライグマを主人公に描いた絵本があるんですけど、よく『たぬきの絵本』って言われるんです。何か悔しいんですよね(笑)。こんなにこだわって描いているのに。僕の中では、たぬきとあらいぐまって全然違うイメージですから。」

こんなこだわりを聞いていくと、いりやまさんの絵の魅力の秘密が見えてきますよね。そうなんです、かなり実物に忠実なんですよ。是非実際に手にとってじっくり見てみてくださいね。
そして、この絵本のおすすめポイントはまだあります。

─── 英単語も同時に覚えられるようになっているんですよね。動物の鳴き声があったり、読み方もちゃんとわかりやすく記載されていたり。お母さん達も意外と勉強になっちゃいそうですね。

「これは、実際に小学校の教師をされている方からもお褒めの言葉を頂いてきました。小学校で英語の授業を進めていく時に、楽しい教材というものが少ないそうなんです。だからとても喜んでくれて、嬉しいですね。」

そういう訳で『ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ』は、とても幅広い年齢層で楽しめる内容となっているんです。ぴよちゃん絵本の中でも、言葉を覚え始める小さい子に限らず、ストーリーを楽しめるようになった小学生低学年に、更には英語の授業が始まる3年生にも。長く楽しめるというのが最大のポイントかもしれませんね!

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いりやまさとし

  • 東京都生まれ。キャラクターデザイン、グリーティングカードのデザイナーを経てフリーのイラストレーターになる。絵本作品に、『ぴよちゃんのかくれんぼ』『ぴよちゃんとひまわり』『ピヨピヨだあれ?』などの「ぴよちゃん」シリーズ(学研)、『ドーナツポーン!』『おやすみくまさん』(学研)、『みどりのくまとあかいくま』シリーズ(ジャイブ)、『おやすみなさいのおと』『ころころパンダ』(講談社)他多数。その他、直販の保育絵本などでも活躍している。


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