●“ゴロン”って寝転んだとき、そばに本が寄り添っている・・・最高の環境だよね
─── 何か、ここまでお話を聞いて、すごく意外なことが多いです…。作品を見ると本当に自由に表現されているように感じていたので…。
俺、何か相当自由にやっている感じに思われているよね。自由といえば自由だけど(笑)。
でも、俺の中で絵本を描いていて、説明は付くけど分からない部分はあるの。その何でそうなったのか分からない部分が重要なんじゃないかなって思っているんだよね。そういう描き方をしたのは偶然じゃない訳だし…、偶然なんかありえない訳だから、絵には。説明はつく、でも表現として何でこうなったか分からない部分はあえて残しておくのが楽しみなんだ。「他の人はこの絵本を見てどう思うんだろう」って考えるのがね。もしかしたら、そこに自由さを感じるのかなぁ(笑)。
─── それを聞いたら、荒井さんの作品を読む度に「ここはこう思って描いたのかも、でもここはこうじゃないかしら…」って、子どもと一緒に考えるのがすごく楽しくなりました。
最後に、絵本ナビ読者に向けて、荒井さんが考える絵本の魅力、楽しみ方を教えてもらえますか?
なんていうのかな…。マニュアルみたいなものを見ながら選ぶ本もひとつの手ではあると思うけど、誰も薦めないけど自分は気に入っている絵本も子どもには見せたらいいと思うんだよね。気に入っているポイントは理屈じゃなく、「色がきれい」とかでもいいと思うんだよ。子どもに理解できるかという尺度で推し量らないほうが良くて、分からなくても親が好きなものを見せてあげればいい。図鑑なんて最高に良いよね(笑)。地図とか、ビジュアル百科事典なんかも。子どもは遊ぶ天才だから、それさえも遊ぶ材料にするよ。その能力を奪う必要は無いと思うし、必ずしも絵本って言う作られたもので遊ぶ必要は無いと思うよ。
もちろん、マニュアルはマニュアルで重要だと思うし、買わないで借りてくるものと、常に家にあったほうがいいなと思える本が分かれていても良いと思うんだ。
俺は、本がそこにあるっていう環境が大事なんじゃないかって思うんだよ。ゴロンって寝転んだときに本がそばに寄り添っている、本のぬくもりを感じるのって良いよね。
本がある環境は、窓を開けたらそこに山があるなって感じと似ていて、いつもは考えていないんだけど、あるあるあるって安心する。そういうものであってほしいな。
─── 我が家にある絵本が、とても宝物に思えてきました。
今日は本当にありがとうございました。
今回、取材にご協力していただいた、「SEE MORE GLASS」さんは、1996年にオープンした絵本の読める小さな喫茶店。趣のある店内には、懐かしい絵本や児童書が並んでいて、ギャラリーもかねている壁面には、荒井良二さんをはじめ、田村セツコさんや植田真さんの原画が常設しています。オススメのタンポポコーヒーを飲みながら、のんびりとしたひとときを過ごせるお店です。
SEE MORE GLASS
住所:〒150-0001東京都渋谷区神宮前6-27-8京セラ原宿ビルB1F
最寄り駅: 東京メトロ 明治神宮前 7番出口より徒歩3分、JR 原宿 表参道口より徒歩8分、JR 渋谷 宮益坂口より徒歩12分
TEL & FAX: 03-5469-9469
営業時間: 12:00 〜 18:00(土日祝日 14:00 〜 19:00)
ランチタイム: 12:00 〜 15:00(平日)
※絵本や展示を見るときは15:00以降がオススメです。
定休日:不定休
URL:http://www7b.biglobe.ne.jp/~seemoreglass/
(編集後記)
人気者の荒井良二さん。私にとってもやはり憧れの作家さんですし、特に『空の絵本』は大好きな作品でしたので、取材前は緊張感と好奇心でいっぱいいっぱい(笑)。
実際にお会いした荒井さんは、気さくに、でもとても丁寧に、作品について、絵についてわかりやすくお話してくださるので、こちらも段々質問が止まらなくなってしまって…かなり長時間の取材となってしまいました。
全部ご紹介しきれないのが残念なのですが、荒井さんの多彩な活動についてはHPをのぞいてみてくださいね!
Ryoji Arai official Web Site >>>
(編集協力 木村春子)