●スージー・スパッフォードさんにお話しを伺いました!
─── スージー・ズーは日本でも多 くのファンがいますが、そのことについてどのように感じられていますか?
日本はもちろんのこと、アメリカ国外でも、スージー・ズーのファンがたくさんいることを知ってとても幸せに感じています。私の生み出したキャラクターが、いろいろな国でしかも世代をこえて愛されているという事実は、本当に特別な意味を持ちます。つまりスージー・ズーのイラストやキャラクターが普遍的な魅力を持っているということなんでしょうね。年々拡大するスージー・ズーの人気を見守ることができて本当に嬉しいです。わくわくしてます!
─── リトルスージー・ズーの誕生エピソードについて教えてください。
25年ほど前、小さなアヒルの子どもを描いたグリーティングカードをつくり、当時そのアヒルの子を"Baby Duck (赤ちゃんアヒル)"と呼んでました。グリーティングカードはかなりの人気がでて、そのBaby Duckのイメージを使ってパーティグッズ、ギフト用のラッピングペーパーやベビーグッズ関連の紙製品をたくさん作りました。
その後1998年に、オリジナルのスージー・ズーからBaby Duckのブランドを開発して、商品に使用するためのスタイルガイドを作りました。その中に、一枚、ベビーベッドにぬいぐるみと眠るBaby Duckのカードがあったのです。
そのぬいぐるみがみなさんもご存知のブーフ、ララ、パッチズの原型となり、「リトルスージー・ズー」の土台となりました。
その翌年、私はBaby Duckの物語を書き上げました。子どもの時の思い出をもとにしてね。ちょうど4歳年下の弟のジョニーが、まだ赤ちゃんだった時の記憶よ。
ある日、わたしの母が洗濯かごの中に弟を寝かせ、洗濯物を干していた時のこと。その眠っている弟の様子があまりにもかわいいので、私たち二人でキャーキャー騒いでいたんです。彼の頭の上に、ハワイアン・リリーをのせたりして。その思い出をグリーティングカードにしました。これが、最初の絵本『あひるのウィッツィー』のもとになっています。その小さな Baby Duckには名前が必要だったので、「ウィッツィー」と名付けました。
─── 「ウィッツィー」には意味があるのでしょうか。
父がよく私の耳元でささやいていた言葉からきています。"Witzy-witzy-witzy"と何度も繰り返しささやいてみるとわかると思うわ。耳がくすぐったくて、いつもくすくす笑ってしまいます。それに、タンポポの綿毛のことをいう"Wispy"にも発音が似ていますよね。ジョニーと私は裏庭の草の中でよくタンポポを見つけていました。母が弟の風になびく白いブロンドの髪をふわふわのタンポポのようだって言ってたのを覚えています。わたしには、サリーという姉もいるのですが、彼女がすぐに小学校に通ってしまったので、弟が一番の遊び友達だったのね。小さい頃の思い出は本当にたくさんあるの。私の人生の中でもとても特別な時間でした。
この「リトルスージー・ズー」という名前をブランド名にしたのは、もともと「スージー・ズー」のキャラクターの中にウィッツィーがいたからなのよ。「ウィッツィーワールド」という名前も考えたのだけれど、すでに認知度のある「スージー・ズー」というブランドと新しいブランドを結びつけたかったからなの。
─── このたび、日本で新刊絵本『ウィッツィー、きのうえにようこそ!』が発売になります。
新作に対する想いを教えてください。
新刊『ウィッツィー、きのうえにようこそ!』は、よちよち歩きのウィッツィーがいつも遊んでいる裏庭から好奇心で初めて外の世界へ踏み出す瞬間を描いたものです。フェンス越しから聞こえるどこか聞き覚えのあるその声は、ウィッツィーをまだ見たことのない世界へ誘い出して、ウィッツィーは自然とゲートを押し開き外にでていきます。
─── 初めてのお外ですね。ウィッツィーは、ブーフを連れて行くのでしょうか。
もちろん、ぬいぐるみのお友だちも一緒です。ブーフはいつも一緒。でも、実は裏庭を一人で出てはだめというママの言いつけを守るためなの。こんなふうに理屈をつけるのは、子どもの自立心が目覚めたときによくあることなのよね。ウィッツィーは、しばらくの間茂みに隠れています。小さな子どもたちって、年上の子どもたちをこっそりとのぞくのが大好きなものです。でも、やっぱりトラブルに巻き込まれないか少し恐いのよね。
─── 今までずっと裏庭で遊んでいたウィッツィーにとってそれはすごい冒険ですよね。
そうね。ウィッツィーがブーフを連れ出して裏庭の外の茂みに隠れる、その行動は小さい彼の勇気でもあるのよ。実際にウィッツィーがのぞいているキャラクターが、よく知っている仲間だってこともこの物語にリアリティを与えていると思うわ。自分のいとこや友達が何をしようとしているのかを発見することは、ウィッツィーが成長しているサインなのよ。
─── ブーフも同じくまのぬいるぐみの「ボタンズ」という新しいお友達に出会いますね。
ブーフは、自発的にワゴンから転がり落ちた小さなクマに向かって歩いていきます。こうすることで、ブーフは他のクマのぬいぐるみとは違うんだとわかるのよね。ブーフはもともといたずらっ子のバッタ、ピョンピョーンによって命を宿したぬいぐるみだったこと、みなさん覚えているでしょうか。私は、自分の物語は現実的に説得力のあるものにしたいと思っています。だけど、物語にちょっとした魔法をかけるのも私の特権なんです。ただ結局のところ、登場するキャラクターたちはウィッツィーもブーフもみなおはなしをする動物なんですよね…。
─── 今回、9匹のテディベアが登場しますね。このテディベアについて教えてください。
このテディベアは、スージー・ダッケンに代々受け継がれてきたお気に入りのコレクションです。
─── ぬいぐるみのブーフのように、このテディベアたちも生きているのですか。
いいえ、スージーにとっては、このテディベアたちはただのぬいぐるみなんです。
ウィッツィーがブーフに感じているものとは違います。でも、この9匹のテディベアの中で、「ボタンズ」という名前がついた小さなクマだけは、ブーフの目に留まります。「ボタンズ」は、物語の中でワゴンから落ちて、他のテディベアたちとはぐれてしまうのです。この物語を書いて初めて気づいたの。この小さな古いクマは、私の一番古いテディベアがモデルになっていたのよ。私はいつもこんなふうに、物語の中にちょっとした自分のエピソードを盛り込むのが好きなんです。
─── ブーフとウィツィーのような関係は、幼い頃なら誰でも経験していますよね。
子どもの想像力ですよね。成長するにつれて、ぬいぐるみたちがいずれ沈黙すること。それは、ウィッツィーのような子どもたちにとっても必ずおこることなんです。でも、ウィッツィーに関してはそこまで現実的にならなくてもいいのかもしれません。この物語の中に彼がいる以上、永遠に歳をとる必要もなく、3歳半のままなんですから。
─── スージー・ダッケンたちが登場する「ダックポート」シリーズについて少しご紹介ください。
ダックポートの町には、本当にたくさんの言い伝えがあります。ここではすべて紹介できないのが残念だわ。
─── ダックポートの町にはたくさんのキャラクターたちが住んでいるんですよね。
スージー・ダッケンは主人公の女の子ですね。
スージー・ダッケンは、ハンマーを巧みに使って便利でかっこいいものをたくさん作るのが大の得意なのよ。(彼女のお父さんのレスターは著名な木工職人で、彫刻家なんです。)彼女は、ダックポートで一番人懐っこい女の子で、みんなが仲良くいれるようにいつも気配りしてるムードメーカーなんです。
ジャック・クエーカーは、いかにも男の子を代表するキャラクターで、とにかくせっかち。速さを競う場面ではレースに勝ち、常に一番を目指します。いつの日かビーク諸島の上空を飛び回りたいと切望しています。仲の良い友達グループ「ダックポート・アドベンチャー・クラブ」のリーダーで、主人公のスージー・ダッケンは、ジャックのお隣に住んでいて、彼のことをボーイフレンドだと公言しています。ジャックは絶対に認めていないのだけど。
そしてこのジャックの年下のいとこが、ウィッツィーなんです。ウィッツィーは、クエーカーという名字のアヒルの大家族の中で一番幼いのよ。
それから、スージーの親友は、エミリー・マーモット。彼女はいかにも女の子って感じの子でいつも差し入れをもってくるのよ。だから、エミリーが短気でいらいらすることがあっても、ジャックは彼女のこと我慢しています。
ジャックの親友のコーキー・タートルは、スージーとも幼馴染。コーキーはスージーの家のすぐ近くのとってもおもしろい形をした丸い家に住んでいます。かなり優秀な頭脳派で、忍耐強い性格です。彼はなんでも解決しちゃうのよ。亀だけれど、コーキーはのろまじゃなくて、実際にビーク諸島の中では一番足の速い亀だと有名なの。
─── みなさん、恐らく疑問に思っていると思うのですが、スージー・ダッケンは、アヒルなんでしょうか。
実は、違うのよ。彼女を私は「Ducken」と呼んでいるのですが、にわとりとあひるの雑種のように見えるけど、実際は「The Beak Isles (ビーク諸島)」の固有種なの。世界で 唯一「Ducken」たちが住んでいる場所がこの諸島の中にあるんですよ。
─── 「ダックポート」シリーズについてももっといろいろお聞きしたいのですが…。
彼らがダックポートの町を建設するまでには、とても長い歴史があります。「ダックポート」シリーズの面白いエピソードは本当に山ほどあるのよ。それについてはまた別の機会にお話しますね。
─── 絵本ナビをご覧の皆さんにメッセージをお願いします!
ウィッツィーのたくさんの仲間達が仲良く暮らしている空想の世界、ダックポートへようこそ!
今までみなさんがウィッツィーと楽しんでくれていた裏庭の世界から飛び出して、みなさんをダックポートの魅力的な世界へ道案内できることに、本当にわくわくしています。どうぞダックポートのたくさんの住人とお友達になって楽しんでください。そして誰があなたに一番似ているのか教えてくださいね。