初恋をテーマにした作品を集めたアンソロジー。ゴールズワージ「リンゴの木」、泡坂妻夫「六代目のねえさん」などを収録。
2008年刊行。収録作品は以下。
・「六代目のねえさん」 泡坂妻夫(1970)
・「初恋」 原作:ツエルゲーネフ 漫画:水野英子(1963)
・「源氏物語 夕霧と雲居の雁の恋」 原作:紫式部 ※現代語でまとめたもの
・「筒井筒」 作者不詳 ※児童向け図書より採録
・「リンゴの木」 ジョン・ゴールズワージ(1916)
・「人間そっくり」 ロバート・ブロック(1943)
平安時代と近・現代のいろいろな初恋が楽しめる。
恋愛観や、主人公の性格、時代背景などが様々。純愛や一本気の恋もあり、優柔不断で不誠実な恋もあり、恐ろしい恋もあり。
中でも印象的だったのが「リンゴの木」。主人公の衝動的な恋と優柔不断さが延々と述べられ、嫌になった。ああ、ダメ人間!ひっぱたいてやろうかと思ったが、現実の世界ではよくある話。
でも、こんな風に若い時の一時的な出来心が複数の人の人生を狂わせ、不幸にし、自分も幸せになれない結末を招き、それが晩年になってはっきりわかるという…一種のホラー作品かもしれない。
「若気の至り」「出来心」では済まされないことがあるのだ。
もう1つ。最後の作品は、SFでロボット(人工知能)の成長が描かれるのだが、思春期に初恋を覚えたロボットが、なんの迷いもなく「正しい」行動を選択するのが恐ろしい。
あまり書くとネタバレになるのでこのくらいで。
どれも面白く読みやすい。文字が大きめなので、中高年にもおすすめします。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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