飼い主をもたず、群れに入らず、<孤独の犬>として街で生きてきたラッキー。運悪くつかまり収容所のケージに閉じ込められているとき<大地のうなり>は起きた――。
一面の瓦礫、死のにおいが広がるなか、ラッキーはケージをこわしてそばにいた雌犬と外へ飛び出します。数えきれないほど街にいたはずのニンゲンたちの姿はなく、ジドウシャも一台も動いていない…。地面に開いた大きな裂け目が不気味な、空っぽの街で、取り残された犬たちはどうやって生き抜くのか? あの、猫たちの冒険を描き世界的に大ヒットしたファンタジー『ウォーリアーズ』の作者が描く、新しい物語シリーズ『サバイバーズ』第一弾です。
食べ物を求め、雌犬スイートと街をさまようラッキー。群れで狩りをして暮らしていたスイートは、この街を出て仲間を集めようと言いますが、ラッキーは受け入れられません。ずっとこの街で、<孤独の犬>として一匹で生きてきたのだから。スイートは去り、ラッキーはまた一匹。街にのこされた動物たちと、生き残りをかけた戦いがはじまります。 ラッキー唯一の幸せな記憶を呼び覚ます、幼いときに別れたきょうだいベラとの出会いは、ラッキーに思わぬことをさせることになります。それは、ニンゲンに飼われていた無知な犬たち<囚われの犬>の集団の、<アルファ>…リーダーとしてふるまうこと。
すべて犬の目線で書かれた物語。ラッキーとベラのきょうだいが、母犬から聞いた“アルファの嵐” “大地のうなり”の伝説が物語の下敷きとなり、ベース・スパイスのような味わいを醸し出しています。それはまるで壮大な叙事詩の一部のよう。 街に取り残された犬たちがどうなるのか、第一弾の「孤独の犬」ではまだわかりません。リーダー扱いされることにとまどい、飼い主たちに見捨てられた<囚われの犬>の言動を理解できないながらも、彼らの個々に能力が眠っているとラッキーが知ることが、次巻への希望につながっていきます。1、2巻同時発売です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
〈大地のうなり〉により一面の瓦礫と化した街。食べ物もなく、絶えず身の危険にさらされるくらしのなかで、ラッキーは飼い主から見すてられた飼い犬たちの集団に出会うのだが……。
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