淡いグリーンとオレンジの色彩が目をひくほっそりとした佇まいのこちらの本は、イギリスで子どものための詩や物語の編纂に活躍したジェイムズ・リーヴズの詩に、イギリスを代表する絵本作家、挿絵画家のエドワード・アーディゾーニが美しいペン画を添えた、子どものための詩集。子どもたちに愛情こめて読んであげたい、ユーモアたっぷり、情景が豊かに広がる詩が収録されています。
タイトルを聞いただけで笑ってしまう「もしもブタが飛べたなら」、自分の存在をなんとか気づかせようとするゆうれいとおばあさんとのやりとりが愉快な「おばあさんとゆうれい」、今にもにぎやかな音が聞こえてきそうな「りっぱな音楽隊」、草地でのんびりと過ごす雌牛の一日が目の前に広がる「め牛たち」…など全部で53篇。読む人や聞く子どもたちによって、それぞれにお気に入りの詩が見つかりそうです。
イメージが具体的で、リズミカルに紡がれる美しいことばは、さまざまな植物や動物たち、森や月、川などの自然、遠い場所にいる誰か、ちょっと変わった大人たちの姿を描き出し、手の届かないものや知らないものなどへの想像がどこまでもどこまでも広がっていくのを感じます。時には音楽が聞こえてきたり、香りがしてきたり、風が吹いてきたり、光を浴びているような感じがしたり、五感をたっぷりと刺激してくれます。伝承文学の魅力を子どもに伝える仕事にも大きな業績を残しているというジェイムズ・リーヴズの詩には、物語があったり、どこか懐かしい感じがするものも。まじめで深遠な詩がある一方で滑稽でユーモアたっぷりの詩が多いのも、大きな魅力です。
そんなジェイムズ・リーヴズと生涯を通じて深い友情で結ばれていたというエドワード・アーディゾーニの挿絵は、その詩がもつ世界と雰囲気のヒントを描きだし、読者が自分自身の想像力を膨らませて豊かなイメージを作るお手伝いをしてくれます。描かれている子どもたちは、子どもらしく生き生きとしており、登場する大人たちもほとんど表情がみえないにも関わらず、なぜか気持ちを想像できてしまうのが不思議です。
さらにこの本の表紙には嬉しい仕掛けが。表紙のカバーを取り外して裏面を見てみて下さい。広げると、なんと原書のジャケットになっている1枚絵を見ることができるんです。たくさんの子どもたちが、体まるごと本の世界を楽しんでいる。そんな姿がうかがえる一枚絵を眺めているとなんともいえない幸福感が広がります。 どうぞ子どもたちと一緒に、この贅沢な本の世界をゆったりとお楽しみ下さい。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
英国の詩人、ジェイムズ・リーヴズの詩に、絵本作家として名高いエドワード・アーディゾーニが挿絵をつけた子どものための詩集。53篇の詩に、時にユーモラスな、時に美しい32枚のペン画が添えられています。
|