「おはよう!」 元気に咲いた赤い花。 「なつは どこ? どこ?」 ところが、辺りはすっかり静かです。どうやら夏は終わってしまったようなのです。 海の家も閉まり、海辺ではしゃぐ子どもたちの姿も見えません。 あるのは、誰かが忘れていったビーチボールがひとつ。 「あーあ なつが かえってくれば いいのに」 がっかりしていると、海鳥がばらりと一つはばたきます。 すると、そこにぎらりと夏が広がって・・・!
賑やかな景色はほんの一瞬。今年の夏はやっぱり過ぎたのです。 だけど、海鳥は海の向こうの景色を見ながら教えてくれます。 またちゃんと次の夏がやってくることを。
小さい頃から夏が大好きだった私にとって、あっという間に過ぎ去って行く賑やかな日々がまるで幻だったかの様に感じていたことを思い出します。夏の終わりに感じていた悲しみも蘇ってきます。 この絵本が見せてくれるのは、そんな賑やかだった日々が過ぎ去った後の、少しさみしさを感じる海辺の風景。ゆったりと豊かな色彩で描き出した山ア優子さんの世界観から赤い花の心情は痛いほど伝わってきます。だけど、静かな波の音や涼しい風を感じながら、読みおわった後の心に満たされていくのは、ときのめぐりの約束を信じる喜びの気持ちなのです。 「夏はまたやってくる」 子どもだった私に読んであげたくなる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
夏の終わりに遅れて咲いた赤い花。がっかりしていると海鳥が夏を運んできてくれて…。過ぎて、またやってくる季節。時のめぐりのなかに生きる、すべてのものに約束された希望。よろこびがあふれます。
全ページお試し読みで読みました。
せっかく咲いたのに、もうだれもいない、、
赤い花の取り残されたさびしさが、たまらないですね。
夏が行ってしまう独特のさびしさが絵本になっていました。
でも、また必ずめぐってくるにぎやかさや、陽射し、
夏独特の活気にあふれた情景を思い浮かべるちいさな花に、
作者の気持ちがしっかりと込められていると思いました。
(capellaさん 60代・じいじ・ばあば )
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