長崎の片田舎に建つ古い西洋屋敷に、幽霊が出ると噂される時計塔がそびえていた。江戸末期の大富豪が巨万の富を隠すために建てたもので、ひどく複雑な構造だという。いわく付きの場所を買い取った退職判事の名代で屋敷を訪ねた青年北川光雄は、そこで神秘的な美女野末秋子と出逢い、虜になっていくが……。
謎につぐ謎、手に汗握る波乱万丈の展開で、一度読みだしたら止まらない全42章。結末はみごとな大団円。 中学時代に『幽霊塔』を耽読し、時計塔のからくりと、絶世の美女をめぐるロマンスに憧れた宮崎監督は、映画「ルパン三世 カリオストロの城」のモチーフにその要素を取り込んでいます。
そして60年ぶりに再読し、今回はなんと、時計塔をつくると宣言! かくして、三鷹の森ジブリ美術館(予約制)では「幽霊塔へようこそ展」(2015年5月末から2016年5月予定)の開催が決まりました。そびえ立つ時計塔は和時計。子どもたちには幽霊塔の迷路が用意されています。
本書は、その展示パネル用に宮崎監督が描き下ろしたコマ割り漫画風の解説を、カラー口絵(全16頁)として収める珠玉の1冊。監督のハンパでない情熱が、乱歩の怪奇大ロマンの世界へと読者を誘います。
舞台は大正時代の長崎県。
行動的な美青年、北川光雄は「幽霊塔」と呼ばれる古い建物で、絶世の美女、野末秋子と出会い、心を奪われます。
幽霊塔は、殺人事件があったとか、オバケがでるとか、宝物が隠されているとか…謎に包まれた屋敷。
そして、野末秋子にも、大きな秘密が隠されていそうです。
北川光雄は、野末秋子と幽霊塔の謎を解くべく奮闘するのですが…。
とにかく雰囲気が、不気味。
次から次へと、怪しい人物や舞台が現れ、美男美女が困難に立ち向かう。
ロマンです。
それぞれの人物の行動の動機や考え方が、現代の小説より純粋で、「いやいやいや…」と突っ込みたくなる場面もありますが、それもまた、よし。
ミステリーもしっかりしていて、納得の結末。
巻頭の、宮崎駿さんのカラー口絵(エッセイ?)は、必読です。 (こはこはくさん 40代・ママ 男の子10歳)
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