木彫りにかけては天下一品。「あしたはあしたの風がふく」といつもの決めぜりふ。 旅のお坊さん、風来坊シリーズの名作がかえってきました!
『風来坊の子守歌がきこえる』(1991年刊行)として「読んだら涙が……」の声多数、絶版を惜しまれていた絵本が、作者渾身の加筆とすべての絵の描き下ろしによってあらたな作品として生まれ変わりました。 その名も『風来坊の子守歌』。
戦火のなかから助け出した赤ん坊を、そのまま「風(ふう)」と名付け育て、連れて旅する風来坊。 親探しの旅をつづけること三年、ふらりと入った街道のだんご屋で、自らが戦火の家にのこした木彫りの母子像を目にした風来坊は……?
心熱くさせられる、骨太で時代劇風の人情物語。 お坊さんが燃える村を走り、赤ん坊の泣き声たよりに家に飛び込む冒頭の場面から迫力たっぷり。 雪のなかで無心に遊ぶ坊、星空の下で寄り添って眠るふたり……。もう名場面は数えきれません。 「風」と「坊」と互いに呼び合う、旅の空の下のおだやかな日々は、ページをめくる私たちの心にじんじんと響き沁み入ります。
落語絵本シリーズや『うえきばちです』などで多くのファンをもつ絵本作家・川端誠さんの知る人ぞ知るシリーズ。 なかでも心に残る一冊にあげられてきた作品の、本当にうれしい復刊です。 涙がにじむのを止められない。子どもも大人も知らず知らずひきこまれる。そんな力をもつ一冊です。 ぜひ「風来坊」を知らなかった方も手にとってみてください。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
戦火の中、 両親とはぐれた赤ん坊をたすけだした風来坊。その子を「風(ふう)」と名付け、親さがしの旅をつづける。ふたりはまるで親子のように心をかよわせるが、突然別れがやってきた…。 1991年に 『風来坊の子守唄がきこえる』(教育画劇)として出版された作品。 今回、 絵をすべてあらたに描き、テキストも加筆修正しました。 人情厚い風来坊の物語。川端誠、渾身の感動作です。
戦火の中、泣いている赤ん坊を助け出した風来坊です。赤ん坊に”風”と名づけて親探しが始まりました。風と二人で仲良く旅をしていて三年、やっとめぐり合えた両親に、ほっとしたよかった反面風と離れるのは辛いだろうと思いました。「よかったなあ、風。あえたぞ。あのふたりがおまえのおとうとおかあだ。だんごをはらいっぱい食べさせてもらえ。俺の出番はこれまでだ。ついてくるな、風。さらばだ」お坊さんは走りました。いつもよりはやく、いつもより遠く。「明日は明日の風がふく。おれは天下の風来坊」三年も一緒に旅をしていたから、「いつもよりはやく、いつもより遠く。」に、悲しみや寂しさ、離れる辛い気持ち等が詰まっていると思いました。 (押し寿司さん 60代・じいじ・ばあば )
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