小さな赤い“しゃしょうしゃ”は、いつもいちばん後ろを走ります。 先頭は大きな黒い機関車で、シュッシュッ、チャッチャッとみんなを引っ張ります。 機関車のうしろにつづくのは、“かもつしゃ”“せきゆしゃ”“せきたんしゃ”。 それから、材木などをはこぶ“ながものしゃ”。 “しゃしょうしゃ”はいつも最後です。
動物たちが見まもる山のトンネルや、牧場や道路の脇をぬけ、先頭の機関車が走ってくると、遊んでいる子どもたちは手をふりますが、“しゃしょうしゃ”が通り過ぎるころには見向きもしなくなってしまいます。
「はぁあ。ぼくが ながものしゃか せきたんしゃか せきゆしゃか かもつしゃだったらなあ。そしたら おとこのこも おんなのこも、ぼくをみてくれるのに。」 「きかんしゃみたいに せんとうをはしって、みんなに てを ふってもらえたら、どんなに きぶんがいいだろう! でも ぼくは、ふるくて ちいさな あかい しゃしょうしゃ。だぁれも ぼくを みてくれない」 ある日、高い山をのぼっていく途中で、のぼりきれずに車両がずりおちはじめます。しゃしょうしゃは力いっぱいブレーキをかけますが……?
古い映画やアニメ映画などで、手ブレーキがあるデッキ付き車両を、見たことがあるのではないでしょうか。 でも、機関車に引っ張られるいちばん後ろの車両がどんな気持ちか…なんて、みなさんもあまり考えませんよね。 本書は、注目されない最後尾車両に、あたたかいまなざしをそそぐマリアン・ポターのやさしさが伝わってくる作品です。 3児の母となって作品を書き始め、本書がデビュー作となったマリアン・ポターは、父親が鉄道会社に勤めていたことから、機関車や鉄道が出てくるお話を数多く書いているそうです。 絵はティボル・ゲルゲイ。1950 年代にアメリカで出版された、のびやかでカラフルな色づかいの絵をあじわってくださいね。 翻訳家の小宮由さんが選んだ「おひざにおいで」シリーズの1冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
自分は無力だと思っていた赤い車掌車が、みんなのピンチを救ったことで自信をつけていきます。のどかな風景描写と心地よい文章が魅力の乗り物絵本。翻訳家であり家庭文庫を主宰するこみやゆう氏が、子ども達に自信をもって薦められる良書をあつめた「おひざにおいで」シリーズ第4弾!
「ぼくも せんとうを はしる くろい きかんしゃのように こどもたちに てを ふってもらいたいな」小さな赤い車掌車は、いつもいちばん後ろをはしります。先頭は、大きな黒い機関車で、貨物車や石炭車などがつづきます。ある日、機関車たちは、高い山をのぼっていきますが、坂がきつく、途中で止まってしまいました。いちばん後ろにいる赤い車掌車は、ブレーキをかけてふんばり、ずり落ちそうになるみんなを守ったのです。それから、赤い車掌車も、みんなを救った英雄として、子ども達にひときわ大きく手を振ってもらえるようになりました。
いつも一番後ろに走る赤い車掌車が、坂道で一番後ろで頑張ったから、褒められたし、一番よかったのは、自分自身に、自信が持てるようになったことだと思いました。頑張ったかいもあったし”みんなを助けた英雄”とまで言われるようになったし、自分を僻まないようになったのがよかったです。田舎の山ありの景色が色鮮やかに明るく描かれているのも素敵でした。 (押し寿司さん 60代・じいじ・ばあば )
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