動物と人との深い絆を伝える実話絵本
ときは1941年2月。中国の牛頭山へヒョウ退治に出かけた日本兵の成岡正久小隊長が見つけたのは、 生まれて間もない赤ちゃんヒョウだった。 子猫のように愛くるしいヒョウはハチと名づけられ、兵隊達の宿舎でかわいがられて育つ。 食べるのも、眠るのも一緒で、戦時下での兵隊達の心のなぐさめにもなり、両者は深い絆を結んでいく。 しかし部隊に大きな作戦の命令が下る。 明日の命も知れない戦闘にハチを連れて行くことはできない、ハチを引き取ってくれるところはないか、 と成岡さんは方々手を尽くし、ついにハチは上野動物園に引き取られることになる。 ハチは日本に到着するやいなや大人気となるが、次第に戦況は悪化していき、 ついに動物園の猛獣処分の命令が下り・・・。
野生のヒョウと真心で通じ合った心優しい兵隊の物語は、戦争の悲劇や理不尽さを浮かび上がらせると共に、 人も動物も穏やかに暮らせる平和の大切さを伝えている。
戦時中、中国にヒョウがいたというのは驚きでした。
そして子供をこっそり部隊で飼っていたとは。
家族のいる故郷を離れ、戦争という緊張した状態の中で、動物がそばにいることは癒しだったに違いありません。
それなのに、まさか上野動物園に行くことになるとは・・・
「戦争」、「上野動物園」というキーワードで何かを感じ取った息子は、象の花子のことを思い出したようです。
同じような運命をたどったハチのことを可哀想に思ったようでした。
上野動物園だけにスポットライトを当てると、ただ「死なせた」話になりがちですが、動物達の来歴に着目することで、より深く、戦争によって運命が変えられてしまった人達の悲しみを知ることが出来るのかもしれないと思いました。 (hime59153さん 40代・ママ 男の子6歳)
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