<寓話とネイチャーライティングの境界をさまよいながら>
『動物記』などの作品で知られるシートンと同時代のアメリカの作家、ナチュラリスト、フェミニスト、メアリー・オースティンの日本初の作品集です。カリフォルニアの沙漠地帯の生命を生き生きと描いた「雨の降らない土地」で、ネイチャーライターとしてアメリカでは評価の高いオースティンですが、日本語への翻訳、出版は今までほとんどされてきませんでした。
「籠女(かごおんな)」は、子どものためのお話し集として書かれたもので、インディアンの籠女が、白人の少年アランにパイユートに伝わる小さな物語を聞かせます。コヨーテ、銀モミ、氷河、オオツノヒツジ、女の服を着た男などをめぐる不思議なお話しが全部で14編入っています。「子どものための」とされていますが、内容の豊かさ、深さ、数奇な物語性は、大人の読者にとっても魅力ある作品として充分に楽しんでいただけるものです。ほぼ同時期(1903年)に出版された「雨の降らない土地」から選んだ、E. Boyd Smithのイラストレーションが楽しさを添えています。
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