「キャプテンは、」 耳の奥がきんとした。 「大地にお願いしたい」 背筋は伸びきったまま、制止した。息も止まった。周りがかすかにざわついた。 そのざわつきを押さえるように、「はい!」 威勢のよい声が、後ろからまっすぐ飛んできた。 「よし。大地、頼んだぞ」 「そうだ、周斗。キャプテンマーク、あとで大地にわたしといてくれ」 ずっとつけていたサッカーのキャプテンマークを、他のチームから移籍してきた大地に渡さなくてはいけなかった周斗。くやしくて、チームメイトからも孤立してしまう。自分がいやになっていた周斗が出会ったのは古ぼけた時代遅れの銭湯だった。あさのあつこ氏の推薦デビューの著者が描く、切なく温かい感動の物語。
「読んでいて、上質な児童文学ってこういうことだなあと、うならされました」(丸善 丸の内本店 兼森理恵氏) 「奥行きが深く、意外な物語展開が魅力的で素晴らしい作品だ」 (評論家 野上 暁氏 )
子供がサッカーのキャプテンをしており、共感出来る部分があるような気がして、手に取りました。
幼い時からサッカーが好きで、ずっとオレ様サッカーでキャプテンもしてきた主人公が、後から入ってきたメンバーにキャプテンの座を奪われる・・・
とても屈辱的な展開です。
そのことに傷ついた主人公・周斗ですが、キャプテンという資質の問題と、自分の態度が他のメンバーに嫌な思いをさせていたことに気付き、さらに凹んでしまいます。
でも銭湯という秘密の癒しの場を得ることで、だんだんと変わっていきます。
その様子がとても自然で、心の動きが鮮やかに伝わってきます。
ラストへの流れも自然で、だんだんとチームの心が一つになっていく様子が見事です。
この後どうなったのか、という余韻を残して話が終わりますが、心温まる人と人のつながりが感じられる、素敵なお話でした。 (hime59153さん 50代・ママ 男の子11歳)
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