真夏の一日、女の子が出会う無数の生命と死 なっちゃんがともちゃんの家を訪ねると、ともちゃんはいませんでした。そこで一人で河原にでかけてみると、今は夏の真っ盛り。草が生い茂り、花が咲き、虫たちがうごめいていました。無数の命がひしめく傍らには、魚を飲み込むアオサギや、あちこちで死んでいるセミ。通り雨に降られて家に帰ると、おばあさんからお墓参りに誘われます。お墓参りから帰ると、なっちゃんはともちゃんと遊びました。日本の夏の、濃密な美しさを描いた絵本。
月刊「かがくのとも」を定期購読しているのですが,書店で見ただけでは,なかなか買おうと思わないような
テーマのものも含まれるので,親の世界観を子供に押し付けない意味でも定期購読は有意義だと思っています。
そのなかの一冊,「なっちゃんのなつ」は,子供にせがまれて何度か読み返すうちに,どんどん心の奥に染みこんできた本です。
夏の終わりに近い,なっちゃんの一日をおった,とくに何が起こるでもないストーリーの絵本ですが,
しらずしらずに,そこに描かれていないなっちゃんの物語を想像している自分に気がつきます。
ビデオなどでは得られない,絵本固有の時間の流れを実感できる,いつかあった,静かな静かな夏の一日を思い出させる絵本です。
【事務局注:このレビューは、「なっちゃんのなつ」かがくのとも 2003年9月号 に寄せられたものです。】 (みっくんさん 40代・パパ 男の子3歳)
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