その男がゆくところ、必ずや冒険と怪奇が待ち受ける。 男の名は中村春吉。 明治の世に自転車で世界一周無銭旅行を決行した快男児である。 困っている人間を見捨てておけぬ性分ゆえによく事件に巻き込まれる。 そんなバンカラの権化のような男が、 蘇門答剌(スマトラ)で面妖な植物と遭遇したのを皮切りに、 波斯(ペルシヤ)では怪魔像と対決し、 露西亜(ロシア)では突如現れては消えるバラバラ死体の謎に挑む。 中村春吉が求めるのは秘宝にあらず名誉にあらず。 ただひたすらに未知なるものを求めて探検と旅を続けるのみ。 明治の世界を舞台に冒険譚とSFを見事に融合させた傑作が、 単行本未収録の二篇を加えた完全版として令和の世に甦る!
編者解説:日下三蔵
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