本書では,量子情報理論を用いた素粒子理論の研究,特に超弦理論の最先端を紹介する。従来の物理学は物理法則を時空間における物質のダイナミクスとして捉えてきたが,近年,ミクロな情報を意味する「量子情報」を物質や時間,空間と同じように物理学の基本的な構成要素と見なそうというパラダイムシフトが大きな成果をもたらしている。この最新の潮流を解説するのが本書である。 本書を読むと,「量子力学」「電磁気学」「統計物理学」「一般相対論」が「量子情報」という新しい物理観を通じて,一つの「理論物理学」として統一されることが実感できるであろう。 量子力学から始まり,量子情報理論の基礎,量子多体系における量子エンタングルメントの解析を順に解説し,ゲージ重力対応を通じた重力理論と量子情報の深い関わり合いという,最新の理論物理学まで到達できるように書かれている。最後まで読み進めると,「重力理論の宇宙は無数の量子ビットから創られている」という新しい物理学の考え方が理解できる。究極の統一理論を目指す超弦理論の最先端を知ることができる貴重な解説書である。
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