マリオは考えごとをしています。そして、やっと聞こえる小さな声でお母さんに聞きます。
「ぼくたち、どうしてなくの?」
この質問に対して、お母さんはちょっと考えて。そして、お母さんの思う色々な「なく」について教えてくれます。三つ編みの少女だった頃の自分を思い出しながら。
例えば悲しい時は、体からあふれてしまうのだ、とか。怒った時は、黒い雲みたいに激しい雨を降らせたり、暗闇で自分のいるところがわからない時や、抱きしめてほしくて泣く事もあるのだ、とか。泣き方だって色々。何時間も叫んだり、締めたはずの鍵穴から流れ出すように泣くことも。
ぶつかった壁があまりにも高くて、泣いてしまったり、痛みを和らげてくれるような涙もある。ただ泣きたい時だってある。これはみんな、お母さんの経験なのかな。マリオはお母さんのはなにそっとキスをして……。
誰だってみんな泣くけれど、その理由はさまざまで、個人的なもの。この絵本では、ただ説明するだけではなく、感情に込められた色々な思いが伝わってくるような言葉。そして、呼応するかのように美しく抒情的に描かれた絵。それらが読む人の具体的な経験と重なっていき、いつしか包み込んでくれるかのような気持ちになっていき。だからこそ、とても魅力な1冊となっているのかもしれません。巻末には、「なみだ」についての科学的解説も!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ある日マリオは、ずっと考えていたことを思いきっておかあさんにたずねました。「ぼくたち、どうしてなくの?」 おかあさんは、どうしてなくのか、いくつものことを話してくれました。 かなしいとき、おこってなくこともある、じぶんのいるところがわからなくなったとき、だきしめてほしいとき、おとなになるためになくこともある、何時間さけんでも気がすまなくてなくことも……「なくこと」についてつづられた詩のようなシンプルな言葉のなかには、深い思いがかくれています。美しく魅力的な絵とのコラボレーションは、読む人にたくさんのことを思いおこさせてくれて、安心感をもらえるかもしれません。なくことはたいせつなこと。おしまいには、「なみだ」についての科学的知識も紹介されています。
小さい頃、おとなが泣くのを見るのは不思議な気持ちだった。
自分がおとなになった今では、泣くのには色々な理由があるのが分かるが、それをいちいち立ち止まって考えたりはしない。
この本は、子どもに聞かれた母親が話して聞かせる形式で、色々な涙の意味を教えてくれる。そうして、おとなになっても泣いてもいいんだと教えてくれる。
涙を流すことで救われることもある、そんな当たり前のことに気付かせてくれる。
アナ・センデルさんの落ち着いた絵も、子どもとゆったりとした時間を過ごすのにおすすめです。 (長距離走者さん 40代・その他の方 )
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