鎌倉初期の唯識学匠・解脱房貞慶が自らの観音浄土信仰の理論を確立した書、『観世音菩薩感應抄』。現存唯一の東大寺図書館本の影印を掲載し、その難解な文字を翻刻、訓読と詳解を附して総合的に考察する。 また附録には、薬師寺にのみ現存する貞慶の弥陀浄土信仰の理論を確立した書、『安養報化』(上人御草)を翻刻読解し詳細な解説を施す。 雑多な信仰の持ち主と誤解される傾向にある貞慶の信仰理論を解明する。
【本書の内容】 序 辞 第一部 総 論
第一章 貞慶撰『観世音菩薩感應抄』の撰述と思想的特色(楠淳證) 第二章 『観世音菩薩感應抄』の成立と前後の貞慶(新倉和文)
第二部 『観世音菩薩感應抄』の翻刻読解研究
第一章 表 題 第二章 帰依因縁 第三章 滅罪利益 第四章 臨終加護 第五章 当来値遇 第六章 往生素意 第七章 利他方便 第八章 奥 書
附 録 貞慶撰『安養報化』(上人御草)の翻刻読解研究
序 一、安養は唯報か通化か(第一問答) 二、疑難の由来と会通(第二問答) 三、変化長時浄土と安養世界(第一談義) 四、通化の根拠(第二談義) 五、弥陀の浄土は処々不定(第三談義) 六、『観経』の真偽(第四談義) 七、報化相対の廃立(第五談義) 八、如幻の道理(第六談義) 九、報化二土一体同処論(第七談義) 十、土の本為(第八談義) 結
あとがき
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