2019年7月に刊行された絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』は、悲惨な戦争を幸せな家族の風景から伝えた新しい切り口として話題を呼びました。刊行後は、シニア世代を中心に多くの反響が寄せられ、あの家族を自分自身に重ねて読む人が多いことが分かりました。本書は1500枚以上あったアルバムの写真から絵本ができるまでを紹介し、戦前、戦中、戦後の家族や、亡くなった家族、生き残った家族、また今を生きる家族など、「かぞく」をキーワードに、戦争、平和、いのちについて問い続ける著者・指田和の活動のノンフィクションです。
絵本『ヒロシマ消えたかぞく』をつくった指田和(さしだかず)さんは埼玉県生まれの女性で、
出版社で子どもの雑誌などの編集に携わったあとフリーで活動しています。
『ヒロシマ消えた家族』は2019年7月に出版されましたが、
そのあと2020年に夏の課題図書(小学校高学年の部)に選ばれ、
多くの読者を得ました。
おそらくそんなことで、何故埼玉に住む指田さんが
広島に落とされた原爆で命をおとされた一家の写真と出会ったのか
疑問の感じた子どもたちも多かったのだと思います。
この『「ひろしま消えたかぞく」のあしあと』は、
指田さんがどのようにして、鈴木六郎さんの写真と出会い、
鈴木さんの残したたくさんの写真から一冊の絵本に仕上げていく過程を綴った
ドキュメント作品です。
指田さんが鈴木さんの写真と出会うのは、
広島平和記念資料館での展示からでした。
2016年夏のことです。
展示されていた写真に心を打たれた指田さんは、その後、
展示の写真を提供していた亡くなった鈴木さんの親戚を訪ねます。
そして、鈴木さんが遺した1500枚におよぶ写真と出会います。
そうして、絵本づくりが始まってきいきますが、
指田さんはそれだけでなく、
鈴木さん一家がどのように亡くなったかそのあともたどっていきます。
あるいは、鈴木さん一家が暮らしていた町の様子も
当時の資料とその頃を知る人から話を聞いて
立体的に組み立てていきます。
指田さんのそういった熱意がなければ、
鈴木さん一家のことはこれほど多くの人に知られることもなかったでしょう。
絵本『ヒロシマ消えたかぞく』を読んだ読者なら
ぜひこの「あしあと」も読んでみてもらいたい。
そして、これから読まれるならぜひ2冊合わせて読んでもらいたい。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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