「真夜中12時ぴったりに、教会の十字架の前で、3本足の木のいすにのると、あくまがあらわれる…」
けしのみケーキを食べていると、おじいちゃんがそんなことを言う。あくまの好物のけしのみをまきながら逃げると、拾うのに夢中になってあくまは追いかけてこない、と。ほんとうかな?
ぼくは夜中に3本足の木のいすとけしのみを持って、こっそり家を抜けだし、教会へむかった。大きな扉をあけ、十字架の前でいすにのり、時計の針が12時をさすのを待っていると、心臓がドキドキなっている。その時。
「あくまだ!」
あくまが本当に目の前にあらわれた!ぼくは必死で逃げだした。ところが……?
どこか知らない風景の中で、主人公の「ぼく」が忍びこむのは真夜中の教会。しかも待っているのはあくまの姿。こんなはじまりに緊張しながら読みすすめていくと、途中で様子がガラッと変わるのです。だって、このあくま。なんだかへん、ちっともこわそうじゃない。そこから、ぼくとあくまの夢のような秘密の時間がはじまります。
絵本に登場する魅力的な建築物の数々は、スロバキアの東部やハンガリー、ルーマニアのあたりに点在しているのだそう。スロバキア在住の作家が、その地域につたわるお話をもとに想像を大きくふくらませて創作されたという、この物語。東ヨーロッパの雰囲気を味わいながら、不思議な世界をたっぷりと体験できる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「真夜中12時ぴったりに、教会の十字架のまえで、鉄のくぎを1本もつかっていない3本足の木のいすにのると、あくまがあらわれる。そのとき、あくまの大好物のけしのみをまきながら逃げると、あくまはけしのみを拾うのにむちゅうになって、追いかけてこない、という話だ。」
おじいちゃんからこんな言いつたえを聞いたぼくは、夜中にこっそり家を抜けだして、教会へむかった。いすにのって、12時の鐘の音を待つと??なんと、本当にあくまがあらわれた! でも、このあくま、なんだかちょっとへんなんだ。「うえーん、まってよぅ、けしのみいっぱい食べたいよぅ」なんて、泣くんだもの。
それでぼくは、あくまにもっといいものをごちそうするために、とっておきの場所へ案内してあげたんだ。
スロバキア在住の作家が、地域につたわる言い伝えから想像を大きくふくらませて創作した、楽しい物語。 村の家並みやこぢんまりとした教会などが丁寧に描きこまれ、中欧の雰囲気がたっぷり味わえます。
表紙にひかれて読んでみました。作者さんはスロヴァキアに住んでるんですね。そこのお話がもとになっているそう。建物や背景から異国の雰囲気が伝わってきました。なんとも予想外のあくまでしたが、ほっこりしました。やさしいお話です。 (あんじゅじゅさん 50代・その他の方 )
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