オリーブは小学生の女の子。オリーブの父さんのとなりには、オリーブだけに見える灰色のゾウがいます。いつからいるのかといえば、オリーブが赤ちゃんだった時にママが亡くなってからずっとです。父さんに影を落とす大きくて灰色のゾウ。ゾウは、父さんの悲しみそのものなのです。
オリーブの身の回りの世話をしてくれるのは、やさしいおじいちゃんです。おじいちゃんは家事を楽しんでやり、毎日手の込んだ美味しいお弁当を作ってくれます。学校のお迎えにも来て、オリーブがワクワクするようなことも考えてくれます。 また、オリーブが悲しい気持ちの時には、小さな灰色の犬のフレディがいつもそばにきてなぐさめてくれます。
ある日、100周年を迎える学校の創立記念パーティに向けて、くらしの中やおうちの中にある古いものについて調べ、発表することになったオリーブ。すぐに、昔ママが使っていた自転車を持って行きたいと考えますが、父さんは自動車整備工でありながらも、なかなか直してくれません。
「オリーブがお父さんを元気にしないと、いつまでたっても自転車を直してくれないよ」そんな親友の言葉に背中を押されて、オリーブは、おじいちゃんや親友の手をかりて父さんのゾウを追い払おうと試みます。はたしてオリーブは、父さんのゾウを追い払うことができるのでしょうか。
対象年齢は小学校中学年ぐらいからですが、大人の方にも読んでほしい一冊です。ページ数は144ページと読み応えがありますが、横書きで進んでいく文章は読みやすく、ところどころに入ったやさしいタッチの挿絵も、子どもたちが無理なく読み進めていく時の助けとなることでしょう。子どもたちが読んだら、オリーブの感性にすっと共感して、オリーブとすぐに友だちになってお話に入っていくのではないかと思いますし、一方大人が読むと、子どもたちが見ている世界の繊細さにハッとさせられるのではないでしょうか。
物語の後半には、父さんのゾウを追い払う行動や、心にずっと閉じ込めていた自分の気持ちを外に出すことを通して、オリーブにも大きな変化が訪れます。その場面には、すっかり理解したつもりでいたオリーブの気持ちをあらたに発見する驚きが隠されていて、最後まで読んだ後には、物語をもう一度最初から読み返したい気持ちに駆られました。
オーストラリアのクイーンズランド文学賞児童書部門の大賞を受賞し、各国で翻訳されているという本書は、子どもの心の内にある感情を丁寧に描く物語。悲しみにどう立ち向かうべきかとまどっている子どもにも、悲しみの中にいる大人にもそっと寄り添ってくれる優しさに満ちています。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
オリーブは小学生の女の子。1歳のころに母親を亡くし、父さんはその悲しみでいつもぼんやりしている。父さんのそばには灰色のゾウがいて、オリーブにしか見えない。このゾウは父さんの悲しみそのものだ。そう考えたオリーブは、おじいちゃんや親友の手をかりてゾウを追い払おうとする。
お父さんのそばにいつもいる灰色のゾウ。
オリーブだけに見えるこのゾウは、お父さんの悲しみ。
それを追い払おうと決めるオリーブのお話です。
おじいちゃんや犬のフレディの存在は、オリーブにとってすごくありがたく大切な存在なんだなぁと思いました。
そして、悩みを聞いて一緒に考えてくれる友達も、なんて素敵ないい子なんだろうと。
人の力は大きくてかけがえのないものですが、悲しみに立ち向かうには、それだけではダメなようです。
気持ちの変化・・・オリーブと一緒に味わえる、そんな1冊です。
人の心は複雑で、人により悲しみや辛さの捉え方も重さも様々ですが、人の気持ちがよく描かれている1冊に思います。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子12歳)
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