もし、魔法が使えて何かにへんしんできるとしたら、そしてそれが最後の魔法だとしたら…、何になりますか?何になりたい?
深い森の奥にたった1人で住んでいるという魔女のおばあさんは、年を取って魔法の力が少なくなっていることに気づき、「いまのうちに、なにかいいものにへんしんしなければ……。」と一生懸命考えます。ほこりたかいおばあさんは、最後の魔法でなんとか『いいもの』になろうと頑張りますが、これがいい!と思ってへんしんしても失敗ばかり。なかなかうまくいきません。そこで『いいもの』を探しに町へ向かったおばあさんの前に現われたのは、小さな男の子。ずっと1人ぼっちだったおばあさんは、男の子がかけてくれた優しい言葉に心を動かされるのでした。
人から優しくしてもらうとその優しい気持ちはつながっていくんだなあと、読み終わった後、心がポカポカ温かくなってきます。『いいもの』って、誰かに褒められようとか、自分がいい思いをしようと思っているうちは、なかなかなれないものなのかもしれませんね。最後におばあさんがへんしんした『いいもの』とは、結局誰にとってのものだったのでしょうか。
1999年の発行以来、たくさんの子ども達に読まれ愛されているこちらのお話は、まだ読み物に慣れていない子ども達でも、表紙を開いた時に現われる大きくて読みやすい文字と楽しそうなさし絵を見たら、すぐに読みたくなってしまうことでしょう。絵本から読み物への橋渡しにもぴったり。魔女のおばあさんのその後のお話が知りたくなったら、続編の「すてきなまじょものがたり」シリーズも続けて読んでみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
ほんのり切なくて、心あたたまるファンタジー。もうすぐ魔法の力が消えてしまう年老いた魔女が、最後に何かいいものに変身しようと考えます。さて…。
8歳になったばかりの息子と読みました。
「さいごのまほう」というこの題名から、
何がどう最後なのか?
とずっと考えながら読んでいた私と息子。
まじょは最後の魔法でなにかいいものになりたくて、
すみれやら、カラスやらに変身しますが、
それぞれに何かと不都合があり、
「いいもの」を探し続けます。
そんなときに出会った、小さな男の子、ゆうくん。
ゆうくんの言葉がきっかけで、
大きな木の下で、ベンチに変身!
と、ここまではなかなか楽しく読めたのですが、
まさかこれが最後とは!
息子も、「ええええ!!!」という感じでした。
それでも、読んでいくうちに、
魔女だけでなく読者も、
そうだ、これでよかったんだ、と思わせてくれる、作品の暖かさ。
数年たってベンチのまわりに公園ができたとき、
そこにいた自転車に乗ってる男の子を見て。
「あっゆうくんが大きくなってる!」と
息子が叫びました。
そうか!これ、ゆうくんなのか!
と思うと、さらに暖かい気持ちになりました。
まじょが魔法を使えなくなって、魔女に戻れなかったのは
老いを感じさせる内容でとても切ないのですが、
それでも、みんなが幸せになれた、さいごのまほう。
大きくなったゆうくんを、魔女もあたたかい心で、
見守ってくれていることと思います。 (ムスカンさん 30代・ママ 男の子7歳、女の子3歳)
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