今まで生き物文化誌学会では人にとって重要かつ密接な関係のある生き物の文化誌や関係史について注目してきた。そこで今回の特集では人と生き物の関係について少し斜めから見た事象を取りあげた。つまり人にとっては利用価値も実害も少ない動物との関係史(誌)である。本特集では、主に人の生活に寄生し分布域を広げる小型哺乳類と人間のあいだの関係を取り扱う。そしてこの関係史を紐解くことによって、我々人類自身の歴史を振り返ってみたい。
■目次抜粋 特集 人とともに分布を拡大する“ネズミ”たち 序論 人と“ねずみ”の片思いの関係史から人類史を読み解く
第一部 ネズミの分布拡大の歴史 ハツカネズミにみるアジア先史農耕の陸海展開ルート 日本列島のクマネズミはどこからやってきたのか? ジネズミ類の系統地理学―繰り返される人による移動
第二部 考古学・文献学から見たネズミの記録 日本における家ネズミの考古学的記録 19世紀日本における鼠と小鼠 西アジアの“ねずみ”をめぐる文化誌
第三部 ネズミの分布域における人間の歴史 東ユーラシアにおける10万年の人類史 太平洋を中心とするヒトの拡散―イースター島からマダガスカルまで インド洋海域世界―ヒトの移動が形作る歴史世界
結語 まとめとこれからの展望
珍品図鑑:オリックスの角と蜜蝋でできたトランペット 自然を読む:日本の鷹狩りのいま 自然を読む:文化景観としてのトチノキ巨木林
論文:竹生島における鯰の表象と弁才天 研究ノート:マンボウの令和民俗
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