ノーベル文学賞を初のアメリカ人女性として、世界では四人目の女性として受賞し、世界で最も多く翻訳された作品を世に送り出した作家、パール・バック。 彼女は社会運動家としても多岐にわたる活動を展開し、国の内外を問わず多くの人々を救った。その対象は日中戦争で負傷した中国人、人種差別や性差別で苦しむ黒人や女性、真珠湾攻撃後に収容所に隔離された在米日本人と日系アメリカ人など、また戦後は原爆後遺症を負った被爆者や原爆で親を失った原爆孤児、アメリカで出生したアジア系混血児や障がい児、米軍が駐留したアジア諸国で出生した混血児と母親、障がい児の父母などで、他の社会活動を通しても幅広い人脈を築いた。 彼女の活動では多くの日本人も救われたが、その史実を知る人は少ない。 本書では、幼少期から暮らした中国と後半生を過ごしたアメリカでの生活と、戦前からの日本人との交流を通して生まれた知日家パール・バックの姿を、近代の世界史を背景にひもとく。多くの資料と証言者の発言に基づき、日本人が看過してきたアジアの歴史と、日本人とパール・バックとの友情が解き明かされる。
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