第一次大戦の大量死を人々はいかに超克したか。仲間意識・男らしさの称揚、英霊祭祀等が「戦争体験の神話」を構築する様を緻密に描く。解説 今井宏昌
=== 近代戦争による大量死はいかに克服され、それはどのような政治的帰結をもたらしたか。仲間意識や男らしさ、自由のための意義ある戦争――フランス革命以来、義勇兵が紡ぎ出し、詩や軍歌、文学作品等を通じて支持された神話は、記念碑や戦没者墓地によりシンボル化され国民に共有された。西欧諸国で起きた「戦争体験の神話化」はキリスト教や自然崇拝を取り込んで発展し、英霊祭祀によって死をも統合して、戦争への馴致と政治の残忍化を導いていく。それは第一次大戦後のドイツで頂点に達した……。18世紀末から第二次大戦後までを射程に、神話が犠牲に満ちた現実を覆い隠し、戦間期政治に影響する様を克明に描く。全面改訳。 解説 今井宏昌 ===
戦争体験の神話化 大量死の現実はいかにして克服されたか。 フランス革命から第二次世界大戦後まで。
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【目次】
第一章 新しい戦争 T 起盤となるもの 第二章 義勇兵の戦争 1 革命戦争から解放戦争へ 2 ギリシア独立戦争 第三章 神話の創作
U 第一次世界大戦 第四章 青年と戦争体験 第五章 英霊の祭祀 1 神話とキリスト教 2 埋葬地 3 無名戦士の墓 4 戦争モニュメント 第六章 自然の流用 1 自然 2 山 3 空 第七章 陳腐化の過程 1 玩具・絵はがき・子供たち 2 演劇・映画・観光旅行
V 戦後の時代 第八章 ドイツ政治の残忍化 第九章 戦争の継続 1 「新しい人間」 2 スペイン内戦 3 平和主義 第十章 第二次世界大戦、神話、戦後世代 1 断絶 2 英霊祭祀の衰退 3 顕彰から警告へ 訳者あとがき 解説 『英霊』の遺したもの(今井宏昌)
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