「四年生の夏休みを最高の夏休みにしようよ」
待ちにまった夏休み。山あいの村、天神集落で同じ小学校に通う山ちゃん、シューちゃん、かっちゃん、ぼく(あきら)の仲よし四人組は、早速かっちゃんの部屋に集まります。四年生の夏休みを最高の夏休みにしようと言ったのはかっちゃん。そうして四人の冒険の夏が始まります。
その冒険のひとつが天神橋からの川へのとびこみ。天神集落の子どもたちにとって、川へのとびこみは、ちょっと大人へと成長できた気がするような大切な儀式。そのとびこみにかっちゃんが今年の夏、挑戦したいと言います。けれどもぼくたちの気持ちは複雑です。それは、かっちゃんが筋ジストロフィーという病気で、けがや病気をすると、進行が早まってしまうと言われているから。けれどもかっちゃんのどうしてもの願いを聞いてあげたくて、ぼくたちは準備を万端にして見守るのですが……。
慎重なぼく。やんちゃだけれど頼もしい山ちゃん。マイペースなシューちゃん。性格はみんな全然違うけれど、それぞれの方法で、やりたいことをあきらめないかっちゃんの気持ちを汲み取り、全力で手助けしながら一緒に楽しみます。どんな冒険も四人で一緒に挑戦することに意味があるのです。みんなでなんとか頭をひねらせ、できる限りの準備をして一緒に冒険にのぞんでいく友情がまぶしく光ります。
一方、体に病気を抱えていながらも、かっちゃんはいつも明るくて前向きです。将来落語家になりたいという夢を持っていて、お気に入りは「じゅげむ」。この「じゅげむ」が、冒険に向けて不安になった時や、いい方法が浮かばない時にみんなを勇気づける活力になっているよう。
お話を書かれたのは、これまで数々の児童文学賞を受賞され、心に深く残る絵本や児童文学をたくさん生み出されてきた最上一平さん。その骨太なお話に、マメイケダさんの勢いのある挿絵がとてもマッチしています。表紙に描かれている、緑いっぱいの山に囲まれた集落の上に広がる真っ青な空。むっと湿度を含んだ夏の空気と木々の匂いがしてきませんか。
第70回読書感想文コンクール課題図書の小学校中学年の部にも選定されている本書。夏をめいっぱい冒険したい三年生、四年生に。さらに少年たちの友情と冒険といのちを謳歌する日々のこのきらめきを、大人の方にもぜひ感じてほしいです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
山ちゃん、シューちゃん、かっちゃん、ぼくの仲よし4人組は、天神集落で同じ小学校に通う4年生。かっちゃんは筋ジストロフィーという病気だけれど、小さい頃から一緒にいるぼくらにとって、かっちゃんは特別な存在ではない。親友のひとりだ。そのかっちゃんが、4年生の夏休みに、川へダイブしたいと言い始めた。天神集落の子どもにとって、川へのダイブは、大人への階段を一歩上がるような、そんなならわしだった。「だいじょうぶ、どぼんて落ちるだけだからさ。来年になったらとべなくなるかもしんねえし」。人なつっこい笑顔でそう言うかっちゃんの願いをきいてあげたくて、ぼくらは綿密に計画を練ったのだけれど……。 夏の匂いが濃く立ちこめる山あいの村で、死という確かで曖昧なものを共有しながら、めいっぱいいのちを謳歌する少年たちの夏の日をみずみずしく描いたさわやかな作品。
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