童話屋が「小さな学問の書」を出したとき、安野光雅さんが「これはいい企画だね」と誉めてくださいました。 そして「自分にも書きたいものがある」と言って、一ヶ月で書き下ろしたのが本書です。安野さんは、 童話屋が出版する初めのきっかけ(「魔法使いのABC」) を作ってくださって以来、ずっと兄貴分のように、 童話屋のことを心配してくれているのです。「ぼくが書くと、あとの筆者に頼みやすくなるだろう。」 とやさしく言ってくれます。
冒頭、キング牧師がワシントン大行進の折に演説した内容が紹介されます。
「私には夢がある。いつの日か、ジョージアのあか土の丘のうえで、かつての奴隷の子どもたち と、かつての 奴隷主の子どもたちとが一緒に腰をおろし、兄弟として同じテーブルにつくと きがくるであろう。 (中略) 私には夢がある。いつの日か― (中略) 私には夢がある。いつの日か―」
安野さんは「わたしは、この言葉を声にだして読むことができない。読もうとすると、いつも声がふるえてしまうのだ。」 と述べています。そこを読んでいると、涙をいっぱいに浮かべている安野さんの顔が、目に見えるようです。
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