広島平和記念資料館に展示されていた赤い着物の小さな人形。 「原爆で傷ついた少女のものだったのでは…」と、アメリカの女性から寄贈されたもの。 その女性、ナンシーさんに会って話が聞きたいと、わたしはアメリカ・テキサス州の家を訪ねる…。
実際の出来事をもとに描いた絵本。戦後まもなくアメリカ軍の兵士が広島で拾った人形を、 60年以上もの長い間大切に保管していたナンシーさん。 その人柄、考え、言葉の持つ重さを伝えたいという作者の願いが込められています。 ―――「編集部からのおすすめ」より
広島の原爆を体験(?)した人形が、60年間アメリカの女性に大事にされていたという事実を、作者の指田さんが掘り起こしていきます。
広島平和記念資料館にアメリカから帰ってきた人形。
日本にいた占領軍の兵士から送られたという人形は、アメリカのナンシーさんの心に原爆のこと平和への願いを芽生えさせました。
そして人形の持ち主だった女の子のことを考えさせました。
60年もの間、ナンシーさんに大事にされていた人形ですが、帰るところはやはり広島だったのです。
ルポルタージュを絵本にしたような内容で、物語性というよりも人形を巡る事実を見る人につきつけるような絵本。
淡々と語られる指田さんの文章に対して、牧野さんの絵は人形に様々なことを語らせています。
広島で自分を大事にしてくれた女の子のこと、アメリカでナンシーさんに大事にされたこと、自分が見た戦争の悲しみ…。
地味な作品ではあります。
それでも、何が良くて何が物足りないのか。
掘り起こされた事実を取捨選択するのは平和に慣れきった自分たちの傲慢だろうと、この絵本を読んで感じます。
この絵本には、ナンシーさんの願いと、指田さんの思いが込められています。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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