兄ちゃんのクラスに、広島からの転校生・ケンゴがやってきた。ケンゴの親は原子爆弾で亡くなったらしい。兄ちゃんは「ゲンシ病はうつる」って言ってるけど本当なんだろうか…。うわさから生まれる差別を考える絵本。
「ジンピンゲレツ」
この文字が大きく書かれていて、一瞬何事かと考えてしまったのですが、漢字で書けば「人品下劣」なのでした。
暴力でいじめをする子も、ウワサを風評にしてねちっこいいじめをする子も、人品下劣。
お話は、人のうわさでけんかした自分に、おじいちゃんが自分の子ども時代のいじめを話し始めるところから始まります。
終戦後、そんな昔にもいじめはあったのです。
ヒロシマの原爆で家族を失って、父親は戦争に行って帰らない、そんなケンゴが遠い親戚の老夫婦と住んでいる場所が舞台。
ゲンシ病が移る。
とんでもない話ですが、その風評でケンゴはいじめられ、家族もいやがらせされています。
その片棒を担いだおじいちゃんのお兄さん。
「ジンピンゲレツ」は、その父親が一緒にケンゴの家に謝りに行った時に出した言葉でした。
不正をしっかりとただす父親の姿勢には感銘を受けましたが、話のポイントはそんなことではありません。
その時がきっかけで自転車屋になったかもしれないおじいちゃん。
おじいちゃんは、いじめに対して「ジンピンゲレツ」という言葉で、鋭い批判を持ち続けているのです。
それを自分に語ってくれたことが素晴らしいことだと思います。
このお話をさらに印象付けているのが、文中に織り込まれている宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」です。
最後に詩の全体が記載されていますが、繰り返し読んでいると、いじめられてくじけそうな子に、捧げたオマジナイのような気がしてきました。
負けるな!負けるな!
そんなエールのような気がしました。
いじめている子に対しては、いじめは「ジンピンゲレツ」だということ。
いじめは人間として最低の行為だという言葉も噛みしめてほしい。
久々の梅田俊作さんの絵本に、感動ひとしおです。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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