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古代エジプト経文をおいてあった部屋から一人の大学生がきえた。密室の謎に挑戦した小林少年にせまる恐ろしいたくさんの手!?
昭和35年(1960年)に子ども向け雑誌に連載された、ミステリー小説。ミイラの呪いを暗示させるような不気味な雰囲気が、全体的に漂い、推理小説&ホラー小説風の面白い世界を堪能できる。
今の現役☆子どもたちには、ちょっと理解できない世界観かもしれないが、40代以上の人なら、ミイラをテーマにした映画やゲーム、マンガなどに親しんだ経験があると思うので、むしろ大人の方が楽しめる作品かもしれない。文庫本なので、安いし、持ち運びも便利なので、仕事や人生に疲れたら、ちょっと現実逃避してこの世界で遊んでみてもいいかも!?
少年探偵シリーズらしい、突飛な展開、どんどん不思議なことがあこもこれもずんずん起きる気前の良さ。(アメ横のチョコレートのたたき売りを思わせる) 息もつかせず、アッという言う間にすごいことが終わってしまうのは、ジェットコースターのようで、楽しい。レトロな遊園地に紛れ込んだような読後感だ。
誰にでも不気味なものや不思議なもの、お化けなどは話のネタとしては非常に魅力的。「なんで?」と考えているうちに話がどんどん進んでいって、推理されて種明かしされる快感を味わえるなんて、美味しいものを2つ合わせたカツカレーのような豪華な設定なのだ。おなか一杯の充実感である。
それにしても、子どもの頃から不思議だったのは、ミイラと吸血鬼とフランケンシュタインが、西洋おばけの三大スタアさんの扱いだったこと。調べてみたら、昭和30年代ごろ(ざっくり1950年代〜1960年代あたり)、それらのモンスターをテーマにした洋画が大流行りしたらしい。日本でも昔のアニメで「怪物くん」があったが、洋画や当時の流行の影響などもあったのだろう。
昔の洋物おばけ3大スタアさん達のことを、今の子どもたちはどう思うのだろうか?
お化けやあの世系の絵本や児童書が結構流行っているのを見ると、どうも、今は今の時代にあったスタアさんたちが活躍中らしい。
便利な道具がいっぱいあって、暮らし方も大きく変わってしまった世代にとっては、この小説は、ある意味「時代小説」的な感覚かもしれないけど、是非とも一度読んでみてほしい。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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