「パパ、月ってすごいね。ぼく、月にいってみたい!」
こんなアンソニー少年の夢をかなえようとしてくれるのは、なんとチョークで黒板に描かれたくまさんなのです。
アンソニーが眠っているあいだに、黒板からのっそりと抜け出してきたくまさんは、黒板にチョークで何かを描きはじめます。ふと目が覚めたアンソニーは気づきます。あっ、宇宙船の部品を描いているんだね! くま、きみって天才!
夜の不思議な時間や友情を描いた絵本はたくさんあるけれど、チョークで描かれたくまさんとは! 黒板から抜け出てくる、やわらかな線のくまさんの可愛らしさ、アンソニーの愛くるしさにほっこりした気持ちになります。絵も、くまさんと少年のやりとりも、優しくてふんわり包みこまれるようです。
月は寒くないかな。地面はでこぼこしているかな。水や食べ物がないかな。それから、それから……。月に行くためのこまごました準備をするアンソニーの姿に、私なら何を持っていこうかな、宇宙は暗いから懐中電灯もいるかな、なんて、自分の旅じたくまで考えてしまいます。旅に何を持っていくかを考えるのって、楽しいですよね。 そして同時に、宇宙船の乗り心地はどんなだろう、行ったことのない月や星空への旅に思いをはせて、アンソニーとくまさんと一緒にわくわくした気持ちになります。
さて、目を覚ましたアンソニーはどんな顔をするかな。最後のページは、そんな想像をさせてくれる、夢がいっぱいつまった素敵な絵です。 明日の目覚めが楽しみになる、おやすみ前の一冊にぴったりの絵本です。
(光森優子 編集者・ライター)
こくばんくまさんは不思議なともだち。こくばんの中からあらわれて、アンソニーの願いをかなえてくれます。ある日、月の本を読んだアンソニー。「ぼく、つきにいってみたい!」その晩、こくばんくまさんが作ってくれたのは……。アンソニーとくまの交流が、優しい色使いと愛らしい表情で描かれています。
面白い絵本です。
夢があって、それでも、ぼくは寝ている、というのが、逆に想像させてくれます。
何か、よみきかせをと思っていて、新しい本のところにあったので、飛びつきました。
でも、いざ読み始めると、日本語としては、ちょっと読みにくいことに気が付きました。「くま、」と呼びかけるのは、日本語的ではないように思えます。タイトルのように「くまさん」とか、「くまちゃん」とかを付けないと、日本語らしくない気がしました。
それでも、読んだ子らには好評で、シンプルな画面、少ない言葉、動き出したクマなど、楽しんでくれました。 (山田錦さん 50代・その他の方 )
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