うすい にまいの はね きゃしゃな にほんの しょっかく ちゃんと しんぞうが どくどくうっている からだ
表紙に大きく描かれた黄色のちょうちょ。 その小さく壊れそうできゃしゃな器に凝縮されているのは、溢れんばかりの生命のかたまり。
ちょうちょは、とぶ。そして、ゆったりとやさしくとまる。 おんなの子の黄色の髪飾りとなり、やわらかい黒猫のあたまやもぎたての果実にそっとくちづけ、何のためらいもなく窓の外へ、見たこともない新しい世界をもとめ飛んでいく。ページからページへひらひらと舞う色鮮やかな「ちょうちょ」たちの自由奔放なかわいらしい姿。すきなところではねを休め、すきなだけ世界を味わい遊びつくし、命の果てるまで飛んでいる。絵本をひらいたその瞬間から、心がちょうちょのように軽やかに、そして大胆に解き放たれます。
ちょうちょになったら、きっとこんな気持ち?
「第1回MOE絵本グランプリ」最高賞を受賞した美術作家の松田奈那子さんの匂いたつ色彩の世界を五感で感じられるとても贅沢な絵本。松田さんの絵に感銘をうけた直木賞作家の江國香織さんが、絵本の中で優雅に踊る「ちょうちょ」と楽しく戯れるようにして紡いだ美しい「ことば」の数々。たぐりよせれば、いつでもどこでも私たちを果てしなく続く優しくて甘い広大な世界へと道案内してくれます。 さあ、いますぐとびたとう。だれかにこの気持ちを伝えたくなる絵本です。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
ずば抜けた色彩センスが満場一致で評価された 「第1回MOE絵本グランプリ」受賞作品に、 絵本に造詣の深い直木賞作家・江國香織が 繊細な詩心溢れる言葉を乗せてつくりあげた、珠玉の絵本! 2013年9月刊。
江國香織さんのファンなので購入しましたが、期待以上の素敵な絵本でした。
猫の頭にとまったり、野原や海、夕焼け、夜の世界まで……どこまでも飛び回る自由なちょうちょが主人公。「さびしくても へいき。だって ほら なみのおと せかいは おとに みちている」という、江國さんらしい言葉遣いも魅力。日常に閉じこもっていないで、五感をフルに使って広い世界を味わえば、きっと人生は豊かで素敵なものになるのだと、ちょうちょがおしえてくれるような気がします。
絵は、MOE絵本グランプリを受賞したというだけあって、大胆かつ繊細で、うっとりするほど美しいです。
あかるく軽やかな気分になる絵本です。 (慈雨さん 40代・ママ )
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