メスメル博士のお屋敷に,庭師の父親と住むマリーは,修道院で勉強中です.だけど,マリーが考えているのは植物のことばかり.本当は父親のように庭の仕事をやりたいのです…….18世紀末のオーストリアで,時代や社会の制約にもめげず,自分の道をひらいていく少女を描く歴史フィクション.
望みを叶えた女の子の成長物語。
18世紀後半のウィーン。庭師の娘であるマリーは植物が大好きで庭師になりたいと願いますが、父親からは修道女になるようにと決められています。女性が自分の意思で自分自身のことを決められる時代ではありませんでした。夢を実現したいと願いつつも貧しさと現実の壁の前で立ちすくむばかりのマリーでしたが、やがて、まわりの理解者の尽力によって明るい未来がひらけてきます。
マリーの願いがかなって読者としてはほっとします。しかし一方、現代に生きる私たちからすると、「それはマリーが自分で勝ち取った訳ではなく、まわりの人たちが尽力し決めたことに従ったにすぎない」というところに、歯がゆさを感じるのもまた事実です。ただ、この時代の女性にとっては「あきらめずに望みを持ち続ける」ということだけでも、勇気と強い意志が要求される特筆されるべきことなのでしょう。
この物語はフィクションですが、マリーの良き理解者であるメスメル博士夫妻は実在の人物。また、同時代を生きた有名な作曲家モーツァルトも登場するところが面白いです。2007年に書かれていますが、子どもの頃に読んだ少女向き児童文学の雰囲気を思い出すような作品でした。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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