青い鳥がすぐ近くにいたように、幸せは思いがけない場所にある――。人生を豊かにしてくれるスパイスが詰まったストーリーです。エリナー・ファージョン「サン・フェアリー・アン」、安武わたる「殺られ屋」、曽袮まさこ「石のキャンディー」の、3編を収録。
【内容】
「サン・フェアリー・アン」 エリナー・ファージョン
「殺られ屋」 安武わたる (漫画)
「石のキャンディー」 曽祢まさこ (漫画)
【感想】
悩みを抱える主人公のもとに、「訪問者」がやってきて、問題が解決していくお話。
心の闇、病的な状況が実にわかりやすく描かれている。特に、子どもの心の動きが生々しく描かれていて、怖い。人が心を閉ざすきっかけはいろいろあると思うが、実に些細なことがきっかけとなって大きくその後の展開が歪んだものとなっていく。心を閉ざし始めると、どんどん世界と敵対していく。「サン・フェアリー・アン」では、小さな女の子が大切にしていた人形を失うことから、世界中の人々が自分に対して悪意や敵意を持っているような感じを抱く様子が描かれていた。私も、小さなころに、大事にしていたぬいぐるみを兄弟にぞんざいに扱われて、非常に腹が立った経験があるので、とても共感できる。…実際、兄弟よりも、ぬいぐるみの方がよほど私に親切で大事な存在だった。人形が親友、という時代を経験している人にとって、この物語は身につまされるものがあると思う。
漫画が2作品、長めの読み切り。どちらの作品も他にない個性的な展開。
殺られ屋の、病的な精神状況が連鎖していく状況は、本当に恐ろしい。個人の心の問題が未解決のまま、家庭の問題として再度噴き出したような感じにも見えた。長いトンネルの中を重い荷物をもって歩いていくような、陰鬱な精神状況が伝わってくる。しかし、物語には最後に希望がある。
現実の問題も、諦めずに最後まで取り組みたいと思た。もっとも、現実には問題を解決してくれる「訪問者」は来ないが。
(渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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