「トリとボク」 みんなの声

長新太さんの絵本が大好きです。たくさん読んだつもりでいたけれど、まだまだ読んだことのない絵本に出会えることに、感動します。
ボクが知っているトリたちの秘密。夕方になり鳥が影だけになると、寄り集まってはぞうやクジラ、山の姿になるのです。
緑色と言っても、明るい暗い、濃い淡い、鋭い柔らかい、といろんな緑があって、それがおり混ざった世界はとても美しいです。

夕暮れ、だれもいなくなった水辺で、息を詰めたり、うっとりしたりして、鳥たちを見ている男の子。
シルエットだけになりかけている、鳥たちのかたまったり、ほぐれたりしている様子が、ぼくの観察でとてもよくわかります。
雲のすがたが、いろいろなものにみえるように、とりたちもいろいろに見えます。
水面がキラキラするところは、とてもよくわかります。
少年のとっておきのひみつ、とてもやさしい絵本です。

少年のお気に入りの光景を拝見できて光栄に思います。秘密の場所に鳥たちの皆で一体になってする演技が見事でした。鳥たちが、おとうさんとおかあさんになる場面が気に入りました。少年の中に秘密基地で過ごす楽しみ、自慢したい気持ちが伝わってきました。秘密の場所があるって羨ましいです。安らぐ場所、心休まる場所で癒されている場所なんだと思いました。少年時代に気持ちが帰れるひと時でした。

「この本に出てくるボクって、長さんのこと？」って思えるくらい、夕ぐれの川べにひとりたたずみ、トリをながめている少年が、長さんと重なります。

トリのひみつを知っているなんて、お金をたくさん持っていることなんかより、とても貴重で価値のあることだなあ。少年の心が純粋で、何よりも動物を尊敬していないとこんなひみつはもつことができないと思います。このような少年が本当に存在するのなら、ぜひ、今のまま大人になってほしい。
トリとのひみつをもてない大人ばかりだから。

夕ぐれどきの光景が、心をなごませてくれるので、たくさんの大人にも読んでもらいたい一冊です。

夕暮れの一瞬に川辺が見せてくれる豊かな表情。少年はひとり、トリを見ている。トリの群れがいろいろな動物の形になったり、お父さんやお母さんになったりする。ひとりだけどひとりじゃない、そんな安心感が感じられる。
一人で孤独に見えるけれど、少年の心のなかは孤独なんかではない。少年の感性あふれる心情が見事に表現されている。
一見すると長新太らしくない一冊。絵も文も大人っぽい。