エズラ=ジャック=キーツのこの絵本を読んで、なんてきれいな作品だろうと思いました。
でも、きれいってなんだろう。人はどんなものを見た時にきれいって感じるのでしょう。
辞書で調べると、「きれい」には「色・形などが華やかな美しさをもっているさま」とか「姿・顔かたちが整っていて美しいさま」とあります。
この絵本の場合、色彩の素晴らしさが読者に「きれい」と思わせるのだと思います。
くちぶえが吹けない少年ピーター。
街の中でたたずむピーターの、その街の壁がピンクを基調に描かれています。
実際にそんな色をした壁があったら驚くでしょうが、ここではちっとも変じゃない。
ピーターが暮らす街はなんとも見事な色彩でできていることでしょう。
それに、ピーターの服だって素敵です、
少し大きめのTシャツでしょうか、白地にピンクの線柄がはいっていて、少年の躍動する感情があらわれています。
なかなかくちぶえが吹けないピーターにやっと音がでました。
そのうれしそうな顔といったら。
その自慢げな顔といったら。
絵本ですから音が聞こえないはずなのに、くちぶえを吹くピーターを描いたページを開くと、少年のかぼそい、けれども強い音が聞こえてくるようです。
キーツさんの絵本は色彩もきれいですが、子供のことをとてもよく観察していると思いました。
きっと誰にでもあった、くちぶえがならない悲しみ、初めて鳴った時の喜び。
それが見事に描かれた絵本になっています。