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自分の母親が、自分の名前を忘れていくことを、受け入れようとしている母親。 孫の視点から、認知症と老いるということをとらえた、とてもピュアな作品です。 直木賞作家であり、人の心理を饒舌に文章化していく桜木紫乃さんが、真逆の手法で家族のスタイルを絵本化しています。 文章の行間をそのままに、オザワミカさんの絵は、心の空間を膨らませています。 祖母が自分を忘れても悲しくないという母親には、祖母の死への心の準備があるようです。 人生の中で感じてきた、母親との葛藤にも折り合いをつけようとしているようです。 自分の娘に、祖母とのことを語りながら、「女の子」と「女の人」の違いを語る母親、自分の「女」を語る母親に、家族としての連帯を感じました。 さり気なく登場する父親もグッドジョブでした。 ここからは、自分の心で感じましょう。
投稿日:2021/09/01
まるで詩のように流暢で それでいて 母と娘で実際に話をしているような雰囲気 初め、題名からしても おばあちゃんの認知症のこと?その関わり?と思ったけど 違うな・・・ 私は娘はいないし、母も早くに亡くなっているんで 想像しかできない感じもあるのですが 祖母・母・娘の「女性」としての なんというのか、つながり? 生き方ーなのかな? 自分を軸にしての過去と未来みたいな 何ていうんだろう・・・ “女性として”の生き方?みたいな その立場としての役割ーも 絵も、雰囲気がとてもあって素敵です
投稿日:2021/08/08
いつかあなたをわすれても なんだか恋愛もののようなタイトルですが、認知症について描いたおはなしです。 いろんなことを忘れてしまう祖母さとちゃん。 それを受け入れる母と、静かに見守る孫。 認知症がテーマの絵本は何冊か読んだことがありますが、大抵の作品は物忘れがひどくなっていく様子に切なくなるのですが、 こちらの作品では、いつか忘れてしまうかもしれない時間を、大切に過ごそうという前向きな気持ちになれるものでした。 思い出を忘れてしまっても、なかったことにはならないというのが、とても印象に残りました。
投稿日:2021/08/07
桜木紫乃さんの初めての絵本は、とても考えさせられる女性の、家族の絵本でした。 この絵本に寄せた桜木紫乃さんのメッセージをネットで読むことができます。 そこには母から自分の名前を忘れられた自身の経験が書かれ、そのあとに「この先、どんどんわたしを忘れてゆく母のことを考えながら、「家族じまい」という小説を書きました。絵本「いつか あなたを わすれても」は、小説からは漏れた、孫の視点で書いてみました。」と綴られていました。 この絵本に登場するのは、幼い私、そしてママとママの名前を忘れたおばあちゃんの「さとちゃん」。 認知症の「さとちゃん」はママの名前だけでなく、これまでのことをゆっくり忘れていこうとしています。 ママはそのことを悲しむのではなく、しっかり受けとめています。 そんな「さとちゃん」がいたから、私とママは「女の子と女の人のちがい」や「初めてのキス」のことなど、少し大人の会話ができるようになります。 それは母から娘に手渡す大切な時間。 初めての絵本作りに桜木紫乃さんは、「不要な言葉を取り払ってゆく作業」と綴っています。 いつも書く物語の文体ではなく、言葉を絞ってしぼってできた絵本だからこそ、伝わる思いというのがあります。 桜木さんのそんな思いが、オザワミカさんの絵にもよく伝わっていて、ここでも「不要な」ものが取り払われています。 「いつか わすれてしまうじかんを/たいせつにすごす」、心の奥にジンをくる言葉です。
投稿日:2021/05/09
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