中川李枝子さんの語りと、山脇百合子さんの絵による日本の昔話って、一体どんな感じだろう?と、最初は想像さえできませんでした。お二人のコンビによる作品と言えば、やっぱり「ぐりとぐら」の絵本や、「いやいやえん」などの創作童話が、真っ先に頭に浮かびますよね。
でも、この本は、今までになかった新しい感覚の昔話とでも言っていいような、おもしろさがありました。「よみたい ききたい むかしばなし」のシリーズ名どおり、本当に夢中で読みたくなる、聞きたくなるお話ばかりです。「桃太郎」など、おなじみの昔話も収録されていますが、子どもは「もう何十回も聞いた」なんて言わないで、最後まで楽しんで聞いてくれます。
ちょっと怖いお話もいくつかありましたが、山脇さんの親しみやすくかわいらしい絵のお陰で、これまた愉しく読めてしまいます。
あとがきの中で、中川さんが、「想像力による豊かな心の体験は、これからの長い人生、世の中がどう変化しようと自分を見失わないで生き抜く知恵と根性をたくわえるでしょう。ユーモアのセンスも忘れないで――。」と述べられていますが、本当にその通りだな、と思います。