大好きな画家、バーバラ・クーニーの絵。
我が家にも、引越し前まで、街や農村の風景を描いたクーニーの絵が何枚か飾ってありましたが、都会でも田舎の風景でも、本当に細部に至るまで丁寧に繊細に描かれていて、いつまで見ていても飽きることはありません。
この絵本もまさにそんな風景が続いていて、丘を越え、谷を抜け、村をいくつも過ぎて、いっしょに10日がかりの「にぐるま」の旅をしているように感じます。
そして、この静かなお話の愉しさ!
あとがきによると、詩人のドナルド・ホールが、いとこから聞いたお話だそうですが、「そのいとこは、幼い頃、ある老人から聞き、またその老人は、子どもの頃に、大変なお年寄りから聞いた」とのこと!
世代を超えて、語り継がれてきたお話なのですね。
何もかもが手作りの時代。1つ1つ、家族みんなが心を込めて育て上げ、生活の糧となるものへと仕上げて、市場に運んでいきます。
娘は、「えっ、にぐるままで売っちゃったの?」と驚き、「牛は売らなかったほうがよかったんじゃない?」と、真剣に考えたようでしたが、家にはちゃんと若牛がもう1頭いたんですね。そして、来年のためにお父さんがまた新しい荷車を作り始めたのを見て、安心したようでした。
かえでの樹液を煮詰めて、かえでざとうを作る場面では、「絵本・大草原の小さな家」のシリーズで読んだお話を思い出し、
「ローラのお父さんも、こうやってメイプルシロップを作ってたよね」と話しました。
美しい景色と、人々の慎ましやかな暮らしぶりから、アメリカの古きよき時代の空気が肌で感じられ、心も穏やかに、晴れやかになっていきます。すべてが簡素化された現代にこそ、読み継いでいってもらいたい絵本ですね。