「大好きで何度も読んだ本だから」。妻の友人の中学生の息子さんははにかみながら「もこもこ」を差し出した。
双子の娘に生まれてきたお祝いとしてプレゼンとしてくれるという。大人になりつつある彼からのプレゼントは新鮮だった。大人が子どもに勧めるものはどこか教育欲が透けているようで苦手だ。けれど彼の場合自分が愛読してきたからという強さがある。
以来、娘たちが0歳の時から2歳半の今まで何度も読んでいる。読む度に新しい発見に満ちていて読んでいて楽しい。
年齢に応じて娘たちの反応が変化するのも面白い。「もこもこ」はイラストレーターの元永定正さんの絵と詩人の谷川俊太郎の言葉が一つになったものだ。色の移り変わりが鮮やかで抽象的なイラストなので見方によって色々なものに見える。言葉も意味だけでなく、音やリズムがあって読んでいても楽しい。何度も読み聞かせをしてきて気づいたのは、どういうトーンで、リズムで読むかによって印象が大きく変わるということだ。そして絵本の最後は絵本の最初に戻る円環的な作りになっているから、子どもからもう一回と言われて読む時に物語が繋がっているということだ。子ども達の想像力は無限だから、もしかしたら、二回目には別の物語を想像しているかもしれない。
それはパパやママが読み聞かせで何度も読む時にも新しい発見に満ちているということだ。人間、何度も同じものを読んでいると飽きてくる。しかし、同じ単語でも読み方やリズムによってイメージが変化する。イラストのグラデーションのように言葉にもグラデーションがあることを感じられる。それは子どもの反応の変化によっても変わる。赤ちゃんの時はびっくりしたように目をぱっちり開けたり、ある部分をじーっと見たり、反応していないようで親が目を凝らせばとても反応していることが良くわかる。言葉が出てきだす頃になると繰り返したりするから一層面白くなってくる。「もこもこ」と生えてくるのは何なのか、子どもと一緒に想像しながら読んで楽しみたい。
36才のおじさんの僕ではなく14才の彼からのオススメとして受け取ってほしい。