2020年11月に刊行されたこの絵本(あるいは詩集)の巻末で、詩を書いた谷川俊太郎さんが、一人っ子だったので「ひとりでいるのはあまり苦に」ならなかったと書いています。
そして、「人との間に距離をとらなければいけない時代になっても、あまり痛痒を感じません」と続きます。
コロナ禍の時代に出された絵本(あるいは詩集)ならではの文章ともいえます。
これは一冊の絵本(あるいは詩集)ですが、載っているのは一篇の詩です。
2006年に刊行された詩集『すき』に収められている詩なので、直接的には今回のコロナ禍とは関係していません。
ただコロナの時代に読むと、詩がくっきりと立ち上がってくる、そんな感じがします。
人は誰もがひとりで生まれ、最後にはひとりで死んでいきます。
そんな「ひとり」と「ひとり」にはさまって、たくさんの関係が生まれていることに、この詩は気づかさせてくれます。
詩に添えられたいわさきちひろさんの絵はまるでこの詩のために描かれたような印象をうけますが、実際にはまるで違った作品の組み合わせでできています。
「ひとりひとり」はちがっても、こうして並べていくと、関係性があるように見えてくるのも不思議です。
絵もまた「ひとり」ではないのかもしれません。