絵本が描く世界は、とても広い。
メルヘンもあれば、コミックのような表現もある。
怪談もあれば、神話の世界も、落語噺もある。
赤ちゃんの視線で描かれることもあれば、老人問題だってある。
そして、この絵本『ぼく』は、子どもたちの自殺を描いた作品だ。
「ぼくは しんだ」という、一文から始まる。
文を書いたのは、詩人の谷川俊太郎さん。
「じぶんで しんだ/ひとりで しんだ」と、続く。
男の子がひとりで夜空を見ている絵に、この文がついている。
絵は合田里美さんが描いている。
激しい絵ではない。むしろ、淡い色合いが男の子の感情のようで、切ない。
この男の子「ぼく」にも、夢があったはずだけど、死を選んでしまう。
絵本の巻末に「編集部より」という一文がついていて、そこにはこうある。
「「ぼく」がなぜこのような選択をしてしまったのか。どうしたら、生きることができたのか。
それを考えることが「ぼく」がどう生きたかを、そして、どう生きたかったかを考えることでもあります。」
子どもたちの自殺の問題は難しい。
まして、それを絵本で表現するのは難しい。
絵本を読む前に、まず巻末の「編集部より」で制作者の意図を理解し、本文を読み、そしてもう一度巻末の文を読む。
ひとりでなく、みんなと読んで、意見を交換する読み方もいいかもしれない。