「なぜ戦争はよくないか」、とってもシンプルだけど、とっても深い問いかけだ。
作者のアリス・ウォーカーは『カラーパープル』で黒人女性として初めてピューリッツァー賞を受賞した作家でもある。
この作品は2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件のあと、アメリカが行った報復戦争に衝撃を受けたアリスが書きあげたものだが、その時の戦争だけを否定しているわけではない。
今まで人類が経験してきた、そしていまだに終わることのない「戦争」全般について、アリスは書いている。
まるで一つの物体のように描かれる「戦争」。
日本語訳は今年5月に亡くなった詩人の長田弘さんだが、「戦争だって じぶんの考えをもっているわ」と綴られる。だけど、「戦争」は「じぶんがいまおそおうとしているのが だれなのか」を知ろうとしない、と続く。
だったら、戦争って何だろう。
人は「想像力」をもっている。遠い国の人たちのことも想像できるし、カエルの世界だって想うことはできる。だから、本当は爆弾で逃げまどう人々の悲しみも、タンクの下敷きになるカエルの気持ちも想像することができるはずだが、「戦争」はそれすれ知ろうとしないのだ。
「戦争はたくさん経験を積んでも すこしも賢くならない」。
経験を積めば、よくないこととかしてはいけないことはわかるのが、人だ。
原爆でたくさんの人が亡くなって、そういうことを経験した人なら、もうああいう武器は使ってはいけないと、考えることができるのが、人。でも、「戦争」はそういうことを考えない。
そんな「戦争」って誰が生み出しているのだろう。
「想像力」も「経験知」も持った人間が「戦争」を生みだしているなんて、「戦争」以上に人間って怖い。
それでも、そうじゃないということができるのも、人間だ。
アリスは、そうじゃないといえる人。
世界中を巻き込んだ大きな「戦争」から70年が経って、もしかしたらまた「戦争」を私たちは生みだしかねないところに来ているのかもしれない。
その時、自分はアリスのように、きちんとそうじゃないといえる側にいれるだろうか。
絵本の形になっているけれど、子どもだけでなくおとなにも読んでもらいたい。