『てぶくろをかいに』と言えば新美南吉の名作。
そして、黒井健の絵と頭の中で一体化されているので、可愛すぎるいもとさんの表紙には、ちょっと抵抗感がありました。
母子の心の温もり、手袋を買いに行く町のひなびた雰囲気、話そのものは全く同じなので、どのように表現するかで、物語の印象がどのように変わっていくのか。
黒井さんには黒井さんの世界、いもとさんにはいもとさんの世界があって、それぞれに味わいが違います。
グリムの絵本作家で言えば、黒井さんはフェリクス・ホフマン、いもとさんはバーナデット・ワッツのような対比でしょうか。
黒井さんのしっとり感にたいして、いもとさんはまろやかさ。
それでもキツネの母子の描き方はどちらもパーフェクトです。
いもとさんの心くすぐるような絵に、「この絵もいいかも」と思いました。
ただ、メルヘンチックな絵は、手袋を買いに行った町が若干軽くなってしまったような気がして、ここのところだけちょっと違和感を覚えたところ。
絵本って面白いですね。